【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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268:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/22(火) 00:33:40.39 ID:Qslzj/hk0
―――

「……。ループは起きない、か」

 一人ごちって、空を見上げる。

 以前ならばこんな光景を見ることもできなかっただろう。歓声に沸き立つ客席、嬉し涙や悔し涙を流すウマ娘たち。――そして。


「トレーナーちゃーんっ!」
「おわっぷ」


 マヤノトップガンがかなりの勢いで走ってきて、抱き着いてきた。

 俺は受け身を取ることができず、そのまま地面に押し倒されるような形でマヤノトップガンを見上げることになった。

 頭に走る鈍痛を無視して、笑って見せる。


「よく頑張ったな」


 にこりと微笑みかけると、マヤノトップガンも答えるように黄金色の瞳を弓なりに細める。

 にんじん色の髪の毛がこちらに垂れ下がってきて、毛先が鼻に触れる。こそばゆい心地と、少し甘い……柑橘系の香りだろうか? とにかく女の子らしい香りがふわりと鼻に香った。

 彼女と、彼女の髪の毛に視界全てが覆われて、俺は思わず安堵する。

 ループせずに済んだ。それがどれほど大きい事実か、俺以外にわかる奴は居ないだろう。それこそ、俺が今までたどってきた道を知っている人間以外は――。

 だからこそ、感動もひとしおだ。気分も浮ついている。

 ふとそんな感動に浸っていると、マヤノトップガンの表情がこちらを咎めるようなものになっていた。何かしてしまっただろうか――と思った瞬間、考えを察したかのようにマヤノトップガンが俺の手に軽く触れる。

 何となく察した。ツインターボもそうだったが、このくらいの年の子はそういうのが好きなのだろうか。

 ゆっくりと手をマヤノトップガンの頭へもっていき、絹の糸のような髪を撫でる。するりと指が通って、その度に辺りに柔らかく甘いにおいが漂う。くらくらしそうだ。

 マヤノトップガンの緩む表情を見れば、恐らくは正解だったのだろう。再び、わずかに安堵して――ふと、周りがざわつく音が聞こえた。何かを噂しているようだが……。


「うふふ、仲がよろしいんですね」


 婦人らしき声が聞こえて、俺は思わず硬直した。

 ひょっとしなくてもこれ、事案――。


「むー。なんでトレーナーちゃんとマヤの時間を邪魔するの?」
「仲が良いことはとても喜ばしいことなのですが、少しばかり……注目を集めてしまっているようですよ?」


 マヤと俺はそろって首位を見渡す。

 メイクデビュー。ウマ娘たちの晴れ舞台である。すなわち、それを観戦するためにたくさんの人が訪れているという事で――。

 思わず赤面して、俺たちはそそくさとトレーナー室へと引き下がったのだった……!

――


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