【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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いぬ
◆FaqptSLluw
[sage saga]
2021/06/19(土) 13:59:24.30 ID:cLiN9Ma70
空は人の手が届かないほど高く広がっているように。海は人の手が届かないほど深く広がっているように。陸は人の手が届かないほどに大きく広がっているように。
人にも。ウマ娘にも限界はある。
トレーナーはまだ知らなかった。己に課されたループの宿命が、どれほどに重いものなのか。そして――その過程で、どれだけの絶望を垣間見るのかを。
―――
パドックに入るや否や、ツインターボはきょろきょろとあたりを見渡す。
自分より少し劣るウマ娘、自分より少し勝るウマ娘。精鋭中の精鋭が集まるとされるトレセン学園の生徒たちだけあって、力量の差はあれど全員レベルが高い。
負けたくない。負けない。胸に秘めた熱情が燃え上がるように滾る。絶対に負けないという気持ちが、今にでも彼女の脚をゲートへと向かわせそうだった。
煮えたぎる闘志。それを隠そうともしない彼女は、パドックに居るウマ娘たちに強い警戒心を抱かせた。彼女をどうにかしなければ、自分たちの輝かしいメイクデビューは……失敗に終わるという認識を。
ヒトとは、出る杭を打つ生物である。そのことをツインターボは、レースで思い知ることになる。
―――
「各ウマ娘、今順調にゲートイン! この戦い、目が離せません――!」
高らかに響くファンファーレと、観客の声援。音という音がバ場を支配し、埋め尽くす。――その後に訪れるのは静寂だ。耳が痛いほどの。
ツインターボはそんな中で、やはり少し浮ついた心地にあった。自らの強さを証明するのはもちろんのことだが、これで勝つことができれば――きっとトレーナーはまた自分のことを褒めてくれるのだろう、と。
もちろん勝っても負けてもトレーナーは褒めてくれるはずだろう、とはツインターボ自身も思っている。でもどうせならば――勝利を捧げたい。
全力の意識を以て、ターボはスタートを待つ。一秒、二秒と時が過ぎ、一瞬にも永遠にも思える時が過ぎた時――ついにゲートが開かれる。
ターフに足を叩きつけるように飛び出すターボ。だが、その脚はどこか空回りしていた。浮ついていたせいか、彼女の脚は不確かに地面を叩くばかり。速度が上がっていくが、しかしスタミナは急激に減少していく。
周りのウマ娘たちも、彼女のことを少なからず研究していたらしい。彼女のペースをさらに狂わせるように緩急をつけたレース展開を繰り広げる。――そして、見事にツインターボは、惑わされた。
いつもであれば快調に飛ばしながら最後のスタミナを振り絞って逃げ切りを狙う第四コーナー。視界の前には誰もいない。その事実が勝利の確信をターボに与えた。
……だが、そこまでだった。
最終直線に差し掛かり、各ウマ娘が一斉にスパート。これまで力を温存していたウマ娘たちはいっせいに脚を伸ばし、ゴールへと食らいつかんと走っていく。
一人、また一人と、ツインターボを追い抜くウマ娘たち。そこで初めて、自分の失策に気付いたツインターボだったが――もう遅い。
脚が重く、体は鉛のように重い。何処までも逃げられると思っていたツインターボというウマ娘はしかし、今此処に、置いていかれている。
――孤独だった。
そう理解した瞬間、恐怖した。負けてしまうことに――ではない。ただ、ただトレーナーの悲しそうな顔を思い浮かべてしまって。
それが彼女にとって、酷く恐ろしいことのように感じた。以前まではこうではなかったはずなのに、どうしてこれほどに、失望の表情が痛いのだろう。苦しいのだろう。
解らないことだらけだった。いずれわかるとも思えなかった。この痛みは、この苦しみは、いつだって彼女が自分で覚えるものではない。他者から与えられるものでしかないからだ。
気付けば息はつまり、肺は潰れんばかりに稼働を続けていた。
前方のウマ娘が蹴り上げた芝がひらひらとあたりに舞い、頬にくっつく。
(ごめん、ごめん……!)
心の中で謝るツインターボ。しかし、思ったところで何も始まらない。願ったところで何も始まらない。だからそれは――いうなれば"逃げ"だった。
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