【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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152:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/19(土) 00:53:26.93 ID:cLiN9Ma70
■追加イベント

「にしても、今日は歌ったなー」


 夕日に染まっていく街の中、先頭を進むツインターボは声高らかに笑った。

 とても楽しそうな表情をしているツインターボには、やはり年相応の無邪気さや可愛らしさを感じる。

 人との関係を形容する意味は薄いが、あえて形容すればターボは娘のようなものだ。彼女の悲しむ顔は見たくないし、いつでも喜んでいてほしい。


――トレーナーさん、ありがとうございます!


 ふと、スペシャルウィークがメイクデビュー前に見せた笑顔を思い出す。今頃彼女はどうしているのだろうか。正しく時が進んでいれば、今頃G1レースに出走している頃だろうか。

 ……そんな風にいろんなことを考えていたから、俺は立ち止まっていたターボにぶつかってしまった。

 いて、と声を上げるターボに詫びながら、ターボの視線の先を追う。


「トレーナー、ターボ、あの場所に立てるかなぁ」
「……有馬記念、か」


 該当の巨大テレビジョンからは、数年前の有馬記念がリバイバル放送されていた。様々なウマ娘が並び、全員が全員、歴戦の風格を漂わせていた。ターボと同じスタイルの大逃げウマ娘も、そこに。

 いくら無邪気なターボとはいえど、さすがに先達のことくらいは知っているらしい。ターフに駆ける一陣の風を、バ場に滾る鋼の意思を、コーナーに駆けるマエストロとしての意地を、それぞれ最高のポテンシャルを以て発揮していた。

 だが、大逃げのウマ娘にはそれが無かった。もちろん実力はあったはずだ。だが、彼女の脚質以上に――他のウマ娘が強かっただけ。

 第四コーナーを曲がり、最後の直線。彼女はいとも簡単に追い抜かれ、瞬く間に掲示板外へと転がり落ちていく。カメラのフォーカスは、華麗な差しを決めた一着のウマ娘へと絞られる。

 勝負は酷く残酷だ。どれだけ頑張っていたとしても結果が全て。結果を出せなければ、後には何も残らない。でも、だからこそウマ娘は走る。自らの栄誉のために――。

 ターボはどういうモチベーションで走ってきたかを、実のところ知らなかった。ただの好奇心かな、と思ったり、あるいは気まぐれなのかな、と思ったりもした。

 その内実を、俺は知らない。彼女の口から語られるまでは、こちらから聞いてはいけないものだとも思っている。

 ただ、願わくば――彼女の今後が輝かしいものになりますように。あの日のスペシャルウィークのような辛い顔は、もう見たくないから。

 願いは形となる。祈りは強さとなる。多分、きっと、そうなんだろう。

 だから、俺は祈るし願う。彼女の勝利を。そして――幸せを。


「トレーナー? とれーなーッ!」
「……! どうした、ターボ」
「ターボお腹空いた! 早く帰ろ!」


 ……ああ、いや。でも。祈らなくても多分大丈夫だと思う。

 彼女は多分、俺がいなくてもやっていける。幸せになれると思う。

 いつか俺が消えるその時まで、ターボに教えることができるすべてを教えよう。

 それがせめてもの餞になれば、御の字かな。

―――

▼因子:[スピード★☆☆]を獲得した!

▼因子:[逃げ★☆☆]を獲得した!


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