【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
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142:いぬ ◆FaqptSLluw[sage saga]
2021/06/18(金) 19:13:04.94 ID:JBwdv+s90
 トレセン学園、美浦寮。距離的にも近くはなかったが、かなり早く到着できたと思う。

 道中ヒシアマゾンに何事かと聞かれたが、ツインターボに何かあったかもしれないことを告げると、苦笑を浮かべてすごすごと引き下がった。なにがあったんだ?

 ともかく、今はツインターボの身に危機が迫っている。どたどたと大きな音が立っているのは承知で、ツインターボの部屋の戸を叩く。


「――ターボっ!」
「? トレーナー?」


 中からは間延びした声。寝転がっていたのだろうか。

 にしても変だ。あんなメッセージを残した割に、中から響く声はとてもリラックスしているというか、今も寝そべっているような、そんな印象を抱く。

 だが、それも彼女なりの演技かもしれない。


「大丈夫か?!」
「え……? ターボは元気だぞ!」
「……? 何かあったんじゃないのか?」
「……? ターボ、なにかしたっけ?」


 え?


「……。ツインターボ、勘違いだったら申し訳ないが、一つ教えてくれ」
「な、なんだ……?」
「あのメッセージは何だったんだ……?」
「メッセージ……? あっ!!! トレーナーってユーレイって信じる?!」
「……まぁ、今は信じてるかもだが……。幽霊がどうかしたのか?」


 そういうと、ターボは扉を少しだけ開ける。そこには勝負服に負けず劣らずのカラフルな寝間着に身を包んだターボの姿。

 ターボは少し恥ずかしそうに、ちょいちょいと手招く。耳を寄せろ、と言いたいらしい。


「あのね、トレーナー……。ネイチャがね、ネイチャがね……"今のターボには鬼が住んでますなぁ"って……」
「ナイスネイチャが? どうして?」
「わかんない……。でもね、見まわしても鬼なんてどこにもいなくて……。だから、どこ?って聞いたら、ネイチャが"さぁどこでしょうね〜"って言って……」
「うんうん」
「何処にも見えなくて……だから、ユーレイだと思ったんだ! だから、今のターボにはユーレイが住んでるんだ!!!!」


 叫んでおののくツインターボ。そんな姿を見て、どっと疲れが湧いてきた。

 いろいろ言いたいことはあるが、今はツインターボが無事でよかった。その一心である。


「で、ヒシアマの姉さんに相談したら、追い払ってくれて……」
「ああ、だからか……」
「だからか?」
「何でもない。ヒシアマゾンに追い払ってもらったならもう心配はいらないな」
「うん!」


 笑顔を浮かべるツインターボ。必死で走ってきた結果がこれなら少しは文句も出るかもな、とは思っていたが、案外文句は一言も出てこなかった。

 親ってこんな気持ちなのかもしれないな――。


「……トレーナー? なんで頭を撫でるんだ?」
「ああ、無意識に……。すまん」


 そういいながら手を放そうとするが、ツインターボの頭から手が離れると耳がシュンと下がった。試しに置いてみれば、ぴんと耳が立つ。

 つまりこれは――そういうことなのか?

 試しついでに、ツインターボの髪を軽く撫でてみる。すると、ツインターボの表情が見る見るうちに緩み、口からは声にならない声を漏らす。

 どうやら気に入ったらしい。トレーナーの勉強の中にはマッサージ術も含まれていたから、それなりに自信はあったが――こうも喜んでくれると、素直にこちらも嬉しい。

 そのままツインターボが満足するまで頭を撫で続けたのだが――。


「おーおー、おアツい二人の登場だねぇ〜」


……ナイスネイチャを筆頭に、廊下での一幕を見ていたウマ娘たちに、変にからかわれてしまうのだった。


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