【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「私はこの絆を諦めません」【安価進行】
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858: ◆zbOQ645F4s[saga]
2021/10/03(日) 21:56:10.80 ID:aL/1oNSF0
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【エレベーター】

ゴウンゴウンと音を立てて下っていくエレベーター。
ズッシリと響く低音が臓器を揺さぶるこの感覚にももう慣れてしまった。
ただ慣れないのはこのエレベーターの中の空白。
かつてぎゅうぎゅうに乗り込んでいたこの部屋も、もはやそれぞれが隅に立つのみ。
随分と広くなってしまったものだ。

この裁判が終わるころ、このエレベーターはどうなっているのだろう。
同じ頭数でまた地上に上っていけるだろうか。二度と上がらないなんてことは起こりはしないだろうか。
そんなどうしようもない思考が浮かんでは消え、浮かんでは消え。

「……ねぇ」

口を開いたのは誰だったか。
エレベーターの轟音は不思議とその刹那に聞こえなくなり、やけに通った彼女の声だけが響いた。
カクテルパーティ効果という奴だろうか、私の耳は自然と音を瞬時に取捨選択して、絶望ではなく希望を拾い上げたのである。

「絶対、生きて帰ろうね」

急激に代謝が激しくなるのを感じた。血液が循環し熱を帯びていき、鼓動が激しくなる。
これは緊張とはまた別、鼓舞のためにおこった作用だ。
「生きて帰る」それだけの言葉なのに、仲間の口から発せられた音として聞くとすさまじい効用を発揮した。

「生きて帰ろう」

そして、代謝はなにも私だけに起こったものではなかったらしい。
また別のところからその声が上がった。そしてまたそれに呼応するように声が上がる。
生還を誓う宣誓がそこら中から上がりだし、いつしか私も口を開いてその言葉を口にしていた。

「生きて帰ろう」

気づけばエレベーターの駆動音は大合唱にかき消され、

チーン!

あっという間にその終着駅にたどり着いた。



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