14:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:20:48.10 ID:VDGJuTNc0
「本当はね、いたのよ。私より優しいあの人が。私より美しいあの人が。私より美味しいお菓子をくれるあの人が。私より自分に厳しいあの人が。私はそれを真似してるだけ」
「えぇ!?本当に?」
「本当よ…もうみんな、随分前に遠いところにいってしまったけれど…」
15:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:22:03.07 ID:VDGJuTNc0
「ええ本当よ、そしていつかは貴女もそうなるの」
「そんなの…無理だよ…アタシはおばあちゃんみたいになんて…」
「なれるよ」
16:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:23:07.45 ID:VDGJuTNc0
「おばあちゃんも貴女くらいの歳のころはそうだったよ」
「えぇ!?おばあちゃんが!?嘘だよ!そんな話聞いたことないもん!」
そうね、確かに貴女から見れば私のわがままなんてイメージは無いのかもしれないわね。けれど…
17:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:25:14.73 ID:VDGJuTNc0
「私はね、とても大きなわがままを言ったもの」
「…そんなに大きなわがままだったの?」
「えぇ、今後の人生に関わるような大きな大きなわがままを聞いてもらったの」
18:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:27:17.70 ID:VDGJuTNc0
そして、私は今でも…一人になった今でも、こうしてあの人たちの真似事をして面影を残そうとしている。それは私の自己満足で、やっぱりわがままなのだ。
「ねぇ、おばあちゃん…だったらさぁ…」
「ん?」
19:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:29:34.56 ID:VDGJuTNc0
あの人たちの前では、いつまでも子供だった私。それが嫌だった頃もあった。いつまで経っても自分一人だけが、かっこいいあの人たちに追いつけない。そんな風に思っていた頃もあった。けれど、今はあの頃のようにもう一度と願わずにはいられない。『おばあちゃん』としてよりも、『小宮果穂』としての方がきっとこの子の背中を押せるから…だから、『私』はほんの一瞬『アタシ』に戻る。
20:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:30:33.52 ID:VDGJuTNc0
「おばあちゃん…」
「んー?」
「…なんだか眠たそうなんだけど…」
21:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:31:48.82 ID:VDGJuTNc0
「…アタシ、帰る。帰ってお兄ちゃんと仲直りしてくるよ」
「…えらいねぇ」
いつだったか、自分も兄との喧嘩を美しいあの人に相談したことを思い出す。本当に何から何までそっくりだ。
22:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:32:53.12 ID:VDGJuTNc0
「おばあちゃん、今日はありがとう!!!」
風邪ひいちゃうから、お布団で寝てねと声をかけてくれる優しい孫に、一言だけ添える。
「遅すぎることも…早すぎることもないの…いつだって、貴女が思ったその時が…クライマックスだからね…」
23:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:33:59.40 ID:VDGJuTNc0
少し首を傾げながらも、わかったと言って我が家を後にする彼女を見送ってから、意識を少しずつ手放していく。
『立派で…ございました…』
「凛世さん…」
24:名無しNIPPER
2021/05/23(日) 11:35:04.57 ID:VDGJuTNc0
『背筋が伸びているわ!流石は果穂ね!』
「夏葉さん…」
『果穂ぉぉぉお!!早すぎるよぉぉぉぉお!!でも会えて嬉しいぃぃぃぃい!!』
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