一ノ瀬志希に花束を-SS速報VIP

一ノ瀬志希に花束を

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27:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:32:27.22 ID:0INB05aO0

「志希ちゃんのパパは、どんな人だったの？」
　涙で体がカラカラになっちゃうまで泣いた後、私はコップ一杯のお水を飲んで、そしてまたフレちゃんにもたれかかっていた。
「研究ばっかりしてる、研究馬鹿だったよ。あと、ママにデレデレ。私にもデレデレ」
「研究？　どんなこと？」

以下略 AAS

28:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:32:55.00 ID:0INB05aO0

「わっ、こんな時間……」
　気づけば、翌朝になっていた。
　ふと机の上を見ると、いつ置いてあったか分からないけれど、おうどんが置いてあった。ちょっと冷めている。
　お腹が空いていたのでササっと啜った。

以下略 AAS

29:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:33:35.08 ID:0INB05aO0

「はいはい、外は寒いよー。ちゃんと、いっぱい着込まないと」
「にゃはは」
　昨日、早々に航空券を取った私は、すぐに旅立つ準備をした。
　と言っても、バックパックに必需品を突っ込んだだけなので準備というほどでも無かった。

以下略 AAS

30:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:34:02.91 ID:0INB05aO0

　どれだけ待っただろうか、一向に列車が動く気配はない。
　そも、飛行機ももしかしたら飛んでないかもしれない。
　そういえばと、私はスマートフォンの電源を入れた。
　あの日から、ずっと電源を入れないまま放り投げていたスマートフォン、起動した途端、壊れたかのようにヴーンヴーンと唸りを上げた。

以下略 AAS

31:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:34:40.04 ID:0INB05aO0

　私は踵を返して帰路についた。雪はより激しくなり、移動するにも時間がかかった。
　家にたどり着く。何故か、酷く心臓が速打っていた。
　ドアを開けると、出た時同様にフレちゃんの靴がそこにあった。少なくともフレちゃんは家にいるらしい。
「ただいま～、フレちゃん。ちょっと忘れ物しちゃったー」

以下略 AAS

32:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:35:06.87 ID:0INB05aO0

「フレちゃーん？」
　バスルームに向かうと、電気がついていた。
　けれど、声をかけても返事がない。シャワーの音だけが無音を掻き消すように聞こえる。
　ドアを開けようとしたその時、つん、と血の匂いが鼻をついた。

以下略 AAS

33:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:35:34.52 ID:0INB05aO0

5/
　
　イマジナリーフレンド。
　知能の正規分布から外れてしまった少女は、天才児のご多分に漏れず、大人すら引くような夥しい量の書物と、空想上の女の子が友達だった。

以下略 AAS

34:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:36:12.52 ID:0INB05aO0

「フレちゃん……フレちゃん！」
　私はフレちゃんに駆け寄ると、体を揺すった。反応がない。
　シャワーを止めて血の出どころを探す。
　出血箇所はすぐに見つかった。右手首。ああ、くそ。自傷でどうしてそこまで深く。

以下略 AAS

35:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:36:41.44 ID:0INB05aO0

「遅い……！」
　既に、救急に連絡してから10分以上が経過していた。
　やれることはもう、無い。
　ただ、早く到着するよう祈ることしかできやしない。

以下略 AAS

36:名無しNIPPER[sage]
2021/04/20(火) 22:37:22.80 ID:0INB05aO0
　私には、誰にも言えていない秘密があった。プロデューサーにも、フレちゃんにも。
　誰にも言えていない私だけの秘密。
　自己血輸血。万年貧血状態の私が、レッスンすらままならない私が、万全の状態でステージに立つための唯一の方法。
　一ノ瀬志希という偶像を祭り上げるために、一つだけついた大きな嘘。
　私がみんなのことを謀った、偽りの証拠。

以下略 AAS

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