32:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:48:06.20 ID:2kLflUvfO
威勢よく発進した彼女の自転車はオンボロのママチャリで、
それはまるで老人の散歩みたいなスピードで、
僕は何度もうっかり置いて行ってしまいそうになった。
速すぎるよ、と後ろから声が聞こえる度に、
あんたが遅いんだよ、返しながらブレーキを握る。
「自転車は疲れるなあ」
隣に追いついてきた彼女が、
息を切らして僕に言う。
「じゃあ車でも出せば良いじゃないスか」
「私、無免許なんだよ」
「いまさらそれを気にするのかよ」
「確かに法律なんて関係ないけどね。
でも初めてで上手に運転できる自信はないし、
もし事故っても診てくれるお医者さんがいない。
致命的だよ?」
「速度出さなきゃ大丈夫だろ」
「やなものはやなの!」
年甲斐もなく彼女は口をとがらせる。
いや、何歳なのか、実際には知らないけれど。
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