5: ◆CItYBDS.l2
2021/02/02(火) 18:57:52.40 ID:acYUvXZS0
まずは、語らねばならぬ。
一族に伝わる、先の世の魔王と勇者の戦いを。
「私は、一番槍にして語り部。先代魔王の最期を、お伝えするべく御前におわす」
魔王は、私の口上にしばし前のめりとなった。
「人に滅ぼせられし、先の王。我は、気奴を惰弱であったとは到底思えぬ。それほどに、魔王の座は遠く果てなき頂きにあった。ぜひ、聞かせてくれ」
その御身姿に、私は改めて確信する。
新たな魔王は、かつての魔王より遥かに強いであろうことを。
既に、天下に並ぶもの無き力を携えながら、それでもなお先に学ぼうという姿勢。
今上の魔王は、傲りや慢心とは無縁。
なれば、かの王を打ち倒す隙など一寸ほどありはすまい。
魔王とは、そうあらねばならない。そうなくてはならない。
そのためだけに、我ら一族は語りを紡いできたのだ。
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