18:名無しNIPPER[saga]
2021/01/17(日) 21:23:48.95 ID:3fqL9RpU0
研究室から、作戦室へ戻ると扉の前に修羅のような形相のカレニーナが立っていた。
まるで、ご主人の帰りを待つ番犬、あるいは夜中まで帰ってこない夫を待つ嫁のようだ。
指揮官「おはよう、カレニーナ。ルシアなら、あと30分もすれば来るはずだ」
彼女のいつも通りならば、これからやってくるルシアに勝負をしかけるはずだ。
だが、カレニーナはそれを無視した。
カレニーナ「指揮官、いつもより遅かったじゃねえか。どこに行ってたんだ?」
指揮官「アシモフと少し話してきたんだ」
カレニーナ「…そうか」
カレニーナは、扉の前から動く素振りは見せない。
指揮官「カレニーナは、今日は非番の予定だっただろう?」
カレニーナ「緊急の任務が入った」
指揮官「?そんな急用の任務が入ったのか…えっ」
カレニーナは私の胸元をつかみ無理やり私をかがめさせた。
カレニーナ「話がある、ちょっと面を貸せ」
耳元でつぶやくと、カレニーナはぱっと離れて作戦室前の通路を進んで見えなくなった。
怒涛の展開に呆然とその様子を眺めていると、通路の先で怒声が聞こえた。
カレニーナ「手を繋いでやらないと、ついてこれないのか!」
カツカツと向こうからはや歩きでやってきたカレニーナは、私の手をひったくるとぷいと前を向いて歩き始めた。
なにもわからないまま、薄暗い通路を何本も通り、資材置き場としてしか使われていない空き部屋に連れ込まれた。
カレニーナは部屋の周囲に人がいないかを確認すると扉を閉めた。
未だに、手は繋がれたままである。
指揮官「カレニーナ、なにか不満があるなら喜んで聞かせてもらうよ」
カレニーナ「不満だ?オレは今回の任務は、本当に気に食わない。なにかもが急すぎるんだ」
カレニーナは苛立ちを隠さずに、靴を鳴らした。
指揮官「任務について、なにか問題があるのか?」
カレニーナは身体をこちらに向けた。ほぼ両者の身体が接触するような形である。
火薬の焦げるような微かなにおいと、甘酸っぱい柑橘類の香りが鼻孔をくすぐる。
カレニーナ「今回の任務は、【不穏分子の監視とその処分】だ」
カレニーナ「上は、今はただ監視しろと言ってきた。だが、万が一妙な動きを見せれば、これを起動させろってな」
いつの間にか彼女のもう片方の掌には、パチンコ玉ほどの大きさの灰色の球体が載っている。
カレニーナ「これが起動すれば、爆破と共に内部の無数の破片が飛び出して、周囲の人間を攻撃する。
1つ1つはたいしたことねえし、構造体にとってはほぼ無傷だろうが、ゼロ距離にいる人間なら内臓を傷つけられて即死だ」
カレニーナ「これを、指揮官の装備に取り付けるように指示された」
46Res/56.02 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20