44:名無しNIPPER[saga]
2020/12/16(水) 01:05:48.42 ID:69A+5HqQO
ギュッ
不良(は、速ぇ! 俺が反応するよりも先に、一瞬で……ゴキブリかよ!)
女「は、離して変態!! 触らないでよ!!」
女「離せバカ!!」
兄「ごめん」
女「……!」
兄「ごめん、ごめんよ妹……もう何もしないから。だから死ぬのはやめてくれ」
女「……」
兄「過ちだと認めよう。僕は君に酷いことをしたんだね。てっきり、君が嫌がるのは照れ隠しだとばかり思ってた」
兄「違ったんだね。君はずっと本心をぶつけていたんだね。心から僕をキモイと思って、本気で嫌がってたんだ」
女「やっと気づいたの」
兄「ああ、今更さ。君をここまで追い込まなきゃ気づない、最低なお兄ちゃんさ。いや、もう兄だと言う資格はないか」
兄「離れるけど、その前にナイフを置いてくれるかい」
女「死なないから貴方が先に離れてよ」
兄「……そうだね。僕が怖い君からしたら、今ここでナイフを手放したら、何をされるか分からないよね」
兄「はは……そこまで信頼を失ってるわけだ」
女「……」
不良「おい、離れたぞ。ナイフを置けよ」
女「ええ……」
兄「……」
女「どこかへ行ってくれる? 視界に入れたくないの」
兄「分かったよ。その前にもう一度……」
女「謝罪なんていらない。今すぐ消えて」
兄「……」
不良「あっさり行っちまったな。ありゃマジで目が覚めたな」
女「どうだか」
不良「立てよ。この先にあるやさしい世界、目指すんだろ」
女「そうね。でも、分からなくなってきたわ」
不良「何がだ?」
女「そもそも、やさしい世界って何なの? 人間誰でも闇を抱えてるものでしょう。私にだって貴方にだって」
女「やさしい世界って、人間がいない世界なの?」
不良「さあな」
女「だとしたら、私たちがそこへ到達したら、やさしい世界じゃなくなってしまうんじゃない?」
不良「知らねえよ。やさしい世界ってのがどんなもんか、行って確かめるしかねえ」
女「……」
不良「もとはと言えばあんたが言い出したことだぜ。覚悟があるんだろ」
女「もちろんよ……。さあ、行きましょうか」
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