5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 22:57:48.97 ID:6NLLeJ5C0
ここで文香は息を吸って、
「これでは、ネコババ…… ですね……」
と言った。……
冗談が言われたのだと気付かず、ただ前をじっと見つめて続きを待っていたが、語り手が俯きがちのまま、黒い長髪を斜めに垂らし、徐にこちらへ目を上げた、その様子が妙だったので、ようやく千夜は言意を察した――そうか、アリババとネコババを。
聞こえていますか、と眼で問うようだった。適当に口の端を吊り上げて反応してやったが、それも薄かったらしく、尚も不安そうだったので、加えて「ふふ」と口にした。それでようやく文香は、憂いに代えて、何とも言えない表情を浮かべた。
これで続きが聞けるらしいと安堵し、それから、その表情が≪何とも言えない≫のは彼女と親交の浅い自分だからであって、見る人が見ればきっと満足しているのが分かるのだろう、と思った――≪あはは、良かったな文香≫――うるさい。
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