45:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:30:47.52 ID:6NLLeJ5C0
「お嬢様、そろそろ」
「ああん、細かいのは嫌いだな。ねえ文香ちゃん。魔法使いさんが文香ちゃんのものになんかならなくたって、今の関係でさえいられれば、幸せだね。だけど、もしあの人が誰か他のヒトのものになったら? 私のものに? その誰かさんが、文香ちゃんの側にいられないよう、あの人を奪っていったら? 美しいものは永遠の喜びでも、人の想いは風なんだよ」
文香が顔を背けたり、逆に見つめ返そうとする度、ちとせは踊るように移動した。必ず彼女を隣から覗き込み、視線を惑わせる。
「お嬢様、もう行かないと暗くなります」
「それが、……」
「《それがあの人の幸せならば》? 《背中を見つめてさえいれば》? ねえ、文香ちゃんは今が好き? その今が溢れていくかもしれない、その瀬戸際に、ただ立っていればそれを掴んでいられると思う? それとも玉座に縮まって、宮廷道化師の言うがまま? 街が燃えようって時に、《私のせいじゃないから》? この瞬間に迫られているのに――《異議あるものは今申し出よ、さもなくば永遠に沈黙せよ》。もし手遅れになったら、貴女は何処へ行くの?」
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