白雪千夜「アリババと四十人の盗賊?」
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220:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:40:11.95 ID:tRJaplXx0
 文香は安心したように目を細め、深く頷いた。耳に掛かった髪が滑り、落ちる。まるで絹だ。
 彼女はゆっくりと、囁く準備のように首を突き出し、しかし千夜の耳には程遠い空に、夢見心地の言葉を紡ぐ。

「私は…… 自分で言うのも、ですけれど…… はい、読書家、だと。
 ですが、どれだけの書を読み耽っても、今、千夜さんが仰ったような結論には、辿り着けなかったと思います。それは、千夜さんが見つけた、千夜さんだからこそ辿り着けた答え、だと。……とても愉しく、愛おしい物語でした。
 それで…… 私も、千夜さんが仰ることに、賛成です。
 モルジアナは、確かに幸福だったのだと、思います」

 振り返り、例の蒼い瞳を真っ直ぐに向けて来る。ちょっと見つめ返してはいられなかった。浮かんだ言葉を伝えようか伝えまいか、逡巡した。
「お嬢様のおかげなんです」
 つい、ベンチを掴む。手袋越しの、擦れるような肌ざわりが違和感を生んだ。鼻に息を吸い、ちょっと冷えてきたかな、と思う。



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