205:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:30:13.18 ID:tRJaplXx0
「さて。なんだか、余計な屁理屈をこねたかも。要はモルジアナの話が出来れば十分だったのですが。
幸せなのか、と思うのです。というのも最後、結婚の祝宴ですが、私が参加する演劇ではこの四行のシーンを膨らませ、《私は幸せでございます》と言う事になっている。こんなことを言わせて、いえ、言ってしまっていいものなのか。
確かに、敵は倒しました。今の主人には奴隷の身分を解放され、正式に家族として迎え入れてもらった。しかもその家は多くの財宝を所有する、末永く栄えていく名家です。この上ない名誉であったでしょう。
ですがカシムを、元の主人を奪われた事実は変わりません。彼女は己の力不足を嘆かなかったのか? 主人に尽くす者としての名誉を傷つけられた、叶わないながらそれを回復したいとは? そうして仇を討ったところで戻らぬ主人を想い、《復讐などしても虚しいだけ》とは感じなかったのか? それとも、やってしまえばすっきりしたので幸せになれたのでしょうか?
私には分かりませんでした。思索の始端が自分のこころなのでは、次の足場も探し難い。
だから、美徳と悪徳に照らしたのです。これも自分の考えだとしても、方法論ならば頼み得る」
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