191:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:23:03.79 ID:tRJaplXx0
「ガラン版ではしっかり覚えていましたが、平凡社のヴァルシー写本の訳では、アリババも魔法の呪文を忘れてしまっています。救いを求めて神への信仰告白を唱えると、たちまち頭がすっきりして思い出すのですね。
このあたり、対照的なようではありませんか。こちらの版だと、呪文など忘れてしまうのが当然で、神への祈りによってかろうじて取り戻されるものなのです。
翻るならば原型といえるガラン版では、魔法の言葉は覚えているのが当然で、見えざるものの裁きによって忘れ去られてしまうもの、というところでしょう。
そして、そうして裁かれたカシムの罪は、強欲ではない。むしろ、傲慢さや嫉妬心の方です。
カシムの悪徳は、アリババの兄として、彼よりも裕福でなければ我慢がならなかったことです。未来の為、自分が裕福になる為よりもむしろ、弟よりも多くの財産を持つ兄でいる為に、過去の優位、自尊心を取り戻す為に洞窟へ赴いたことです。自分が上、弟が下。そういう過去に囚われた。過去の名誉に囚われた。
だから、魔法の言葉を奪われた……」
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