182:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:16:50.90 ID:tRJaplXx0
「あるいは、砂上の玉座に編んだ頌詩のような」
詰まった言葉を、文香が引き継いだ。その微笑みは確かな優しさを湛えていて、千夜はそれを感じながら、手を伸ばしかけていた。彼女の手を取って、その甲を撫でようと考えていた。
はっと我に返り、自分がしようとしたことを思って、そんな間柄ではないからぐっと堪えて、堪えたところに、なにか懐かしい気持ちが押し寄せた。
微笑みだ。あれはちとせの微笑みだ。重なっていた。
ああ、だから話をしたくなったのか、と合点して、いや、話をしたくなったからそう見たのでは、と懐疑した。
「聞かせて、頂けますか」
彼女は左の髪をかき上げた。
「はい」
千夜は改まって、正面に文香を見据えた。妙な緊張で、肋骨が締まるようだった。息をゆっくりにして、彼女がいそいそと顔を向けるのを待った。千夜の切迫が伝播したか、文香も深呼吸をするのが分かった。それから彼女は、静かに千夜を見返した。
その儚く蒼い瞳は――
――Chapter8 “リトルリドル”
Last Chapter “話がしたいよ[Chorus2] / Gravity[Chorus1]”――
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