白雪千夜「アリババと四十人の盗賊?」
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179:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:14:46.35 ID:tRJaplXx0
 うわの空で続けようとしたのを止めて、振り向けば、文香が目を細めていた。

 本を閉じ、膝を、身体を、こちらに傾けている。彼女はゆったりと髪を垂らし、思い出に浸るように続けた。

「人は、物語に己を映す。受け取った光を、自分が鏡になって、様々に形を変え、世界に映し出す…… ただ言葉を受け取る、というわけにはゆかない、らしいのです。己は、己を相手には黙さぬもの。自分ならどうするか、自分は今どう感じたか、自分の知識から考証は可能か…… 全く知らなかった筈の世界や、自分のではない隣人についてさえ、物語の最後には持論主張を手に入れる。話を聞きながら、話をしているのです。

 だからこそ、物語は編まれ、聞かれるのでしょう——北村薫からですが——《人生がただ一度であることへの抗議》を、申し立てるように。ひとり分のいのちで世界に立つのでは、得られない光を求めて」



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