人生実験
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2:名無しNIPPER[saga]
2020/10/11(日) 18:14:15.25 ID:suhBG53M0
殺人者の名前は、八総和沙といった。色褪せた飴色の髪に、新雪のように白い頬と、ぎらぎらとぬらりと光る唇が印象的だった。自分が幸運にも、殺人現場に居合わせてしまったとき彼女は虚ろな目で自分を見ていた。見られてしまったという絶望からかあるいは殺したという実感からか、彼女は手に持つ包丁をからんと落とした。
一方、自分の目線は彼女と、その足元で横たわる金髪でアロハ服の若者をゆっくりと往復していた。
アロハ服の上に赤い塊が浮きだしており、ああ、胸を刺されると血はあのように噴き出して止まらないのだなと思った。
刹那の後、彼女は両手で顔を覆い、泣きじゃくりはじめた。
まるで、自分が殺したのかと錯覚し一瞬焦ったが、血に染まった彼女の腕を見れば、誰がやったかは明白である。
自分は一歩下がって、ひとまず場を離れようとした。
犯人の目の前で、通報をするというのは精神的にどうだろうという、その泣いている女へのよくわからない配慮だった。
そして、携帯を取り出すと真っ暗な画面に映る青ざめた自分の顔を見つけた。
携帯の充電が切れていることを思い出し、自分はその高級な板金を忌々しく睨みつけた。
ジョブズよ、この時間で私が万が一の目にあったら、君のせいだ。


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