44:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:48:08.87 ID:V4s4JV6AO
「多分父さんが、紛いなりにもアイドル活動を許してくれてるのは、あの時社長が来てくれたからだと思うんです」
菊地君の父親は、今でもそこまで彼女のアイドル活動に乗り気ではない。ことあるごとに彼女を空手の道に戻そうとしているということも彼女から聞いている。それでも、形だけでも許してくれたのは、あの時我々の熱意が伝わったからなのだろうか。
45:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:49:08.13 ID:V4s4JV6AO
「だから僕決めたんです。社長みたいに、真っ直ぐ、心でアイドルをするって…」
「ははは…菊地君…」
知らない間に、彼女はそんな風に思っていたのか。思っていてくれていたのか。
46:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:49:48.98 ID:V4s4JV6AO
「だから…社長、僕はここ以外でアイドルなんてできません」
「…」
「社長!いつも、ありがとうございます!」
47:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:50:44.48 ID:V4s4JV6AO
05
「あれ?社長?」
「おぉ、萩原君」
48:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:51:30.09 ID:V4s4JV6AO
「あ、社長もお茶飲みますか?」
「あぁ、いただこうかな」
そう言って、手際よくもう一人分のお茶を用意する。こうして彼女がお茶を入れてくれるのは765プロでは見慣れた光景だ。彼女はオフィスに行き、音無君、律子君、そしてプロデューサーの彼の席にお茶を置いた後、私と共にソファに腰をかけた。
49:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:52:05.10 ID:V4s4JV6AO
「はい、どうぞ」
「うむ、ありがとう」
「今日は玉露を入れてみたんですけど…」
50:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:52:47.73 ID:V4s4JV6AO
「萩原君は、いいお嫁さんになるね」
「え、えぇ!?」
「はは、ごめんごめん。今はこういうのもセクハラになるんだったね…」
51:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:53:40.85 ID:V4s4JV6AO
「君はもう十分、強くなったと思うけれど」
「わ、私なんて、まだまだダメダメですぅ…」
「いやいや、君が強くなっていることはみんなわかっているよ」
52:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:54:41.70 ID:V4s4JV6AO
「萩原君…君は…他のプロダクションならばよかったと…思ったことはないかい?」
「え?うーん…無い…と思います」
不安そうに、しかししっかりとした口調で答える彼女からは芯の強さがうかがえる。
53:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:55:29.91 ID:V4s4JV6AO
「もちろん、辛いこともありましたけど…でも、いつだってみんなが励ましてくれて…」
「ほぅ…」
「私…ダメダメだから…できないことも多くて…今まで…学校なんかじゃ『ぶりっ子』とか『あざとい』とか言われたこともあったんです…」
54:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:56:40.56 ID:V4s4JV6AO
「でも、765プロのみんなは違いました…そりゃあできないことで怒られることもあったけど、誰もバカにしたり、意地悪を言ったりしなかったから…」
そこで言葉を区切った萩原君は、大きく息を吸い込んで、続ける。
「だ、だから私!765プロで良かったです!もう一度…いいえ、例え何度アイドルを始める前のあの瞬間に戻っても、私は765プロを選ぶと思います!」
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