4:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:08:14.08 ID:V4s4JV6AO
「社長、お疲れなんじゃないですか?」
「ははは、まだまだ大丈夫だよ。音無君」
ちょうど書類の区切りがついたところで音無君からお茶を差し出された。たしかこれは萩原君が持ってきてくれたものだったか。
5:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:09:16.10 ID:V4s4JV6AO
「今日は雪歩ちゃんが持ってきてくれた玉露を入れてみました。普段とは違いますけど…」
それも彼女なりの気遣いだろう。細かなたころまで目が届く。世界中のどこを探しても彼女より素晴らしい事務員は居ないだろう。何せ私がそう思うのだから間違いない。そう、ティンときたのだ。
6:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:10:46.99 ID:V4s4JV6AO
「…ありがとう」
しかし、私はどうなのだろう。彼女たちの力を引き出せているだろうか。
「大丈夫ですか?なんだかぼーっとしているような気がしますけど…」
7:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:11:32.18 ID:V4s4JV6AO
「音無君は、ここで…765プロで本当に良かったかね?」
「え?」
鳩が豆鉄砲とはこういう時に使うのだろうか。いまいち話の要領を得ていないであろう彼女に私は続ける。
8:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:13:08.68 ID:V4s4JV6AO
「いや、君は有能だ。少人数しかアイドルがいないとはいえこの765プロの事務をほとんど一人でこなしてくれていることには感謝しかない」
今更誤魔化しても仕方ない。少し照れる気持ちもあるが日頃の感謝とリスペクトを正直に言葉にした。
9:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:14:05.15 ID:V4s4JV6AO
「けれど…いや、だからこそ思うのだ。君は…765プロで良かったのかと…」
「はぁ…」
無理をさせている。彼女の有能さに頼り切りになってしまっている。せめてもと、昇給や人手を増やす話を持ちかけたこともある。そこまで余裕があるわけではなかったが、彼女には身銭を切ってもバチは当たらない。そう思って声をかけると彼女はいつもこう言っていた。
10:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:15:03.53 ID:V4s4JV6AO
「思ったことはないのかい?ここよりも条件が良い場所に行きたいと…」
アイドル事務所は他にも、いや、アイドル事務所じゃなくたって、彼女の能力ならばどこでも活躍できるだろう。きっと今よりも良い待遇で働ける。私と知り合ってしまったがために、私に情が湧いてしまったがために縛り付けてしまっているのではないか。そんな考えが浮かんだのは一度や二度ではない。
11:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:16:09.17 ID:V4s4JV6AO
「ここより良い場所ってどこですか?」
「え?そりゃぁ、961プロとか、876とか…」
「社長、それ本気で言ってます?」
12:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:17:35.39 ID:V4s4JV6AO
「いや、君に限ったことではないのだ…アイドルの諸君も、私が見つけてきた最高の原石だ…もしかしたら、こんなコネも金も無い私でなければ、もっともっと…」
彼女たちの実力、才能は本物だ。そんなもの誰が見てもわかる。けれど私はどうだ。業界にほんの少し長く居ただけ。日高舞が引退し、表に立つ者も裏で支える者も多く辞めていったあのアイドル冬の時代に、しぶとく生き残っただけでしかない。こんな男の事務所で無ければ…彼女たちももっと…
13:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 20:18:29.91 ID:V4s4JV6AO
「はぁ…そんなに言うなら聞いてくればいいじゃないですか」
「ん?どういうことだね?」
「だから!アイドルの娘たちにも聞いてみたらいいんですよ!765プロで良かったのかどうか!」
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