高垣楓「あなたがいない」
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84: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:05:19.07 ID:LTP9DQ6S0

「そうですか。分かりました」

 社長さんはそう言うと、私たちをソファーへと案内する。

「まあぶっちゃけこの業界、いろいろなことがありますから。それこそ有象無象というか。心を病むアイドル達も少なからずいるのです。
今はこうして、メンタルクリニックとか心療内科とか、心のケアを専門に診てくれるお医者様が増えました」

 社長さんは視線を外して、呟く。

「昔は精神科、しかありませんでしたから。やはり敷居が高いというか、というより、精神科で診てもらうというのはもうアイドルとしては致命的だとすら、言われるような時もありましたから」
「そうなんです、か」

 ちひろさんは、そう相槌を打った。

「ええまあ、『うつ』というものにあまり理解がなかった、というのが大きくて、ね。怠け者の烙印を押されてしまうのですよ」
「……」
「なので、当人とごく一部のスタッフでなんとかしなければ、と、ほんの数人が悶々と抱えるしかなかったんです。しかも解決は、まあ、ね」
「……」
「所詮、メンタルケアについては、素人の集まりでしかなかったわけですから」

 おそらく、社長さんの経験なのかもしれない。発する言葉には、たいそうな重みを感じる。

「それで私に、あのクリニックを紹介してくださったんですか?」

 ちひろさんは社長さんに尋ねる。

「このご時世、メンタルの問題はうちの事務所だけのことじゃないですからね。横の繋がりもあるわけです」




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