6: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/08(火) 21:27:41.49 ID:REk/3TwAO
――
――――
それから俺と平塚先生は、立ち話もなんだからと近くの喫茶店に向かった。
「コーヒーを一つ。君は?」
「あ、じゃあ俺も同じのを」
砂糖やミルクの有無を聞くと、細い体格の店員は落ち着いた足取りで俺たちの席から離れていく。
「先生、煙草やめたんすね」
テーブルの隅に置かれた灰皿に視線を一度くれるも、そこから先の行動が俺の記憶と食い違ったからだ。
「ああ。旦那と付き合うときにな」
「じゃあ子どもも?」
「娘がもう四つになる。今日は旦那が面倒見てくれているんだ。ちょっとしたお休みだな」
どうしてだか、その光景が自然と想像できた。夫と娘に囲まれて幸せそうな先生の姿が、目の前に浮かんでくるようだった。
「君は吸うんだな」
「あ、えっと……」
「隠さなくていいよ。臭いでわかるものだ」
「そんなに臭いますかね……」
思わず自分の腕の辺りに鼻を近づける。しかし、やはり自分のことであるせいなのか、何も感じなかった。
「やめた人は余計に敏感になるのさ。私もやめて初めて知ったが」
「はぁ……」
54Res/39.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20