22:emanon
2020/09/01(火) 23:01:39.32 ID:p7+LgWTZ0
〜帰り道〜
馬子「錆び付いた車輪 悲鳴を上げ 僕等の体を運んでいく♪」
23:emanon
2020/09/01(火) 23:08:49.95 ID:p7+LgWTZ0
僕「…馬子さん。あんまり秋野を脅かさないで下さいよ。彼女、怯えていました。幽霊とか化け物とか苦手な子なんですから」
馬子「人は皆嘘をつく」
僕「秋野は嘘をつかない子ですよ」
24:emanon
2020/09/01(火) 23:13:51.98 ID:p7+LgWTZ0
僕「でも、どうして秋野にあんな質問を?」
馬子「秋野ちゃんは幽霊の正体、幻覚の正体を知っているから」
僕「…幻覚の正体を知っているなら、秋野は、どうして僕に正直に話さないんですか?」
25:emanon
2020/09/01(火) 23:18:11.94 ID:p7+LgWTZ0
僕「…馬子さんは、もう答えが分かっているんですか?」
馬子「そうね。でも『事実』が分かっても、それが『真理』だとは限らないわ」
僕「…僕は少し頭が混乱してきました」
26:emanon
2020/09/01(火) 23:22:28.71 ID:p7+LgWTZ0
僕「馬子さんは、どうしてマスクを被っているんですか?」
馬子「…それが会話を埋めるための軽い質問なら答えないわ」
僕「…どうですかね。知りたいとは思っていますよ」
27:emanon
2020/09/01(火) 23:30:05.82 ID:p7+LgWTZ0
〜病院〜
僕「どうして都市病院に来たんですか?」
28:emanon
2020/09/01(火) 23:37:39.74 ID:p7+LgWTZ0
橋本さん「ぉーぃ、おーい、おーい!君!どうしてここに?」
僕「あ、え、ぼ、僕ですか?」
橋本さん「君だよ、君。あー良かったあ。心臓の移植手術は上手くいったんだね」
29:emanon
2020/09/01(火) 23:41:48.41 ID:p7+LgWTZ0
橋本さん「ん?な、な、なんだ、君?その、馬の被り物は、なんなんだ?」
馬子「心臓移植はそもそも適合するドナーを探すだけでも時間がかかるんだ。現代社会の平均待機期間は653日。なおかつ脳死状態で、加えて血液型が一致した人間じゃなければならない。年齢も体格も体重も慎重に評価されるのに、一週間やそこらでドナーが見つかる訳がないじゃない…」
橋本さん「あれは偶然みたいなものだよ。まさに奇跡だ。停電が起きて、急いで復旧作業をして。そんなトラブルがあったにも関わらず手術を成功させて…、お医者さんには頭が上がらないね。ああ、君がこうして元気に動いている姿を見れて僕は安心したよ。本当に良かった」
30:emanon
2020/09/01(火) 23:44:55.09 ID:p7+LgWTZ0
僕「はっ!は、橋本さんっ!じ、実は、入院してるクラスメイトがいて…。ほら、ずっと入院しているから、ふさぎ込んじゃって、なんとかその子を楽しませようと思って、笑える小道具を持って来たんですよ。馬の被り物とか、笑えるでしょう?ははは…」
橋本さん「…ふう。いや、びっくりしたよ。まあそういう事なら余計な口出しだったね。ごめんね」
僕「いえ、すみません、こちらこそ」
31:emanon
2020/09/01(火) 23:48:01.94 ID:p7+LgWTZ0
橋本さん「辛かったら、きちんと大人に言いなさい。黙ってて良い事なんかないからね。自分の中で問題を抱え続けるという選択肢は、あまりにも自分勝手過ぎる。知らないからこそ幸せ、そういう言葉があるかも知れないけれど。君が死んだ時、周りがどれだけ辛い想いをするか、周りにどれだけ迷惑をかけるか、それが分かるなら決して一人で抱え込もうとはしない筈だ。僕は、何も知らずに息子が死んだら凄く後悔するよ…」
僕「そうですね…」
馬子「…橋本さん、あなたが入院していた部屋の番号は?」
32:emanon
2020/09/01(火) 23:53:26.53 ID:p7+LgWTZ0
馬子「嫌いよ、ああいう人間」
僕「…橋本さんは悪い人じゃないですよ」
馬子「黙って良い事なんかない?はあ?そういうのは、誰にも言えない程の痛みを味わった事がない、頭が最高にハッピーな人間が口にできるクソみたいに感情のこもってない言葉なんだよ。なんであんたに相談しないか分かるか?話す価値のない人間だからだよ。あんたにその価値があるなら、とっくのとうに話してるさ。死にたいって気持ちは、死にたいって痛み抱えた人間にしか、分からないんだよ。
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