4: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:23:36.23 ID:qUczw4Pjo
実にラフな格好だった。オフィスに尋ねるような服装でないことは間違いない。それ以上にデスクワークを中心とした会社の中において清潔感が多少足りていない!
なんなんだ?こいつはなぜ俺を付け回す?正直なところ、ふつふつと怒りが沸き始めているところだった。
「一体なんの目的があって俺に───」
きっと強く睨みつけて、言葉を。
そう思っていたのに、褐色の男の方からまさか仕掛けてくるとは思っていなくって。
「目的はひとつです」
「何?」
「思い出してもらうんですよ、アンタに」
一瞬たじろぐ、と同時に言われたことを反芻した。
思い出して、もらう?アンタ……俺に?何を?
突然の言葉に困惑し、俺は動揺してしまった。全く身に覚えのないことだが、しかしそれを思い出してもらうなどと、それもかなり堂々と宣言した。
しかも、その様はどうしても、嘘をついているようには思えない。ハッタリと言うわけでもなさそうだし、だからこそ余計に腑に落ちない。俺に何をさせるつもりなのだろうか?
向こうも相当真剣な表情で俺を見ている。覚悟あってここに乗り込んできているということなんだろうか。それで……それで?何を思い出させるんだって……?
疑問符だらけの俺を見て、彼は言った。
「大事なもん、全部思い出して、そんで帰りましょう。平子さん」
ひらこさん?
……誰、だ?
何がなんだか、わからない。彼は今、何を言っている?それに、それになんだって?誰の話をしているのかもよくわからない、俺はそんな名前ではない───
「なんだと?俺は後藤だ……誰だそいつは」
「やっぱりな……朝の感じから分かってましたけど、なんで忘れちゃうのよ。大事な思い出、たくさんあったのに」
「いや、いや待って、それは俺が聞きたいんだけど?」
「何が!」
「そもそもお前は誰だ?俺はなんだって?どうしてここに来た、そして何をさせたい!」
全身がびしょりと、汗にまみれていくのがわかった。嫌な汗だ。こんなものかきたくなかった。焦り、怒り、戸惑い、様々な感情が全身をこわばらせて、じわりと包んでいる。空調からの風ももう生ぬるくしか感じない。
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