16: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:54:17.86 ID:qUczw4Pjo
子供みたいな疑問が胸中渦巻いて、けれど言葉にすることは、返事が、言葉が帰ってくるのが恐ろしくてどうしようもなくて黙り込む。
だけど、だけどさぁ。
本当に?
ここは俺のための楽園?
ずっとここにいてもいい?
いや……そんなわけがない。
俺は子供じゃない。
聞き分けのない子供じゃないし、これがきっと夢なのだと言うことはよくよく分かっているつもりだ。だから、これは俺の甘えというか、本当に夢……叶えばいいな、と思っているレベルのものなんだ。
「思うだろう?」
長考しているさなか、突然声をかけられてしまったので、えっ、と思わず声を上げて聞き返してしまった。
「この場所が、としまえんが、世界から消え去る必要なんてない、そう思うだろう?」
それは。
言葉が出ない。何も言い返せない。俺の胸中に渦巻いていた感情そのものだったからだ。
あの水しぶきを無くしたくはない。あの世界を失いたくはない。
そうだ。
ああ、そうだよな。
間違ってない。その通りだ。
理性が否定しているのに、感情が超越してどうしてもどうしても、そう結論を出してしまったんだ。
としまえんがなくなるはずがない。
としまえんがなくなっていいはずがない。
永遠に、未来永劫いつまでも、俺達の心を満たしてくれる幸せな場所じゃないか。
流れるプールだって、奇抜なCMだって、いつかから復活した夜空を彩る花火だって、なんだって重要で、この世界からなくす必要なんてひとつもないじゃないかよ!
色々考えているうちに胸の奥に熱くなる感情が目覚める。目頭が熱くなってきて、込み上げるものをなんとか押さえ込んだ。この場所に涙は似合わない。笑顔で、そう笑顔で。
「そうさ、ここは夢の国。だから」
そうか、そうだったんだ。
俺はここにいていいんだ。全てを忘れて、このままずっとこうして、遊んでいてもいいんだ。
「うん、君はここにいていいんだ」
───夏はまだ終わらないんだ。
◆
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