6:名無しNIPPER
2020/08/23(日) 20:08:04.40 ID:mHiJ1Ddl0
◆
あかりちゃん、そろそろ来てるかな。
仕事の邪魔になってはいけないからと、相談を終えると早々に生徒会室を出た。
図書室に寄ってみようかと思ったけれど、私の足はそのまま部室に向かった。
まだそこにいるあかりちゃんを見るのが嫌だなと思ったから。
できたら私より先に部室にいて、「ちなつちゃん、どこ行ってたの!?」なんて心配したみたいにそう言ってほしかった。
果たしてあかりちゃんは――来ていた。
いつも通り、机に教科書とノートを広げて。
ぼんやりと俯いていた。
ちなつ「――あかりちゃん?」
あかりちゃんは私が来たことにも気付かなかったみたいで。
私が声を掛けると、大袈裟に驚いてみせた。
あかり「えっ、わっ、ちなつちゃんっ!?」
ちなつ「どうかした?」
あかり「ううん、なんでもないよっ。ちょっと考え事してたんだぁ」
ちなつ「そう……?」
悩みごとがあるなら話してね。
そう言おうとして喉元まで出かかったその言葉を押し戻す。
今、あかりちゃんにそう言っていいのかどうか私にはわからなかった。
ちなつ「あかりちゃん、借りたかった本は借りられた?」
あかり「あ、うん。借りられたよ」
向かい合わせになるように座って、私も鞄から教科書とノートを取り出して机に並べる。
あかりちゃんを見た。
あかりちゃんの視線は決して私に向くことがなかった。落ち着かない様子でシャーペンの先を指先でいじっていた。
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