713: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/29(火) 21:35:20.44 ID:Dh94pGk20
#
最初は、当面の隠れ蓑としてしか、彼のことを考えていなかった。でも、彼は真っすぐで、優しかった。
そう……先代たちが愛してしまった男たちのように。
そして、私もまた、彼に惹かれてしまった。
それがただの本能なのか、それとも私の「記憶」によるものなのかは分からない。でも、それが誤ってると知っていても……想いは強くなってしまった。
だから、あの日……私が浚われたことはむしろ僥倖だったのかもしれない。多分、私の方が耐えきれなくなっていただろうから。
結ばれることは、何かしらの破滅に繋がる。そう理性では分かってた。
オフィーリアさんからも、「もしその時が来たら、まずゆっくり考えなさい」と釘を刺されていた。
この身体である限りは、誰も愛することはできない。……分かってたはずだった。
だから、アヴァロンに連れ去られ、「女神の雫」を作れと命じられても、私は抵抗しなかった。
ああ、これでよかったのだ。先代たちのような「過ち」を、繰り返すことはない。……そう思い込もうとした。
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20