692: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/15(火) 19:08:40.93 ID:CRgXx40Z0
……メディアが狙いではないのか?そもそも、はるか西のアングヴィラの近衛兵団団長ともあろう者が、わざわざ単騎でエリックやプルミエールさんを狙うなんて……
金髪の男は、深紅の大剣を地面に突き刺して言う。
「居場所を教えれば見逃してやるよ。俺はその『女神の樹の巫女』には興味がないんでな……」
「……何でエリックたちを。アヴァロン大司教とは、仲間なのか」
「仲間……というより同盟だな。ただ、互いにやることは干渉しないことになってる。ま、『魔王エリック』と『魔女プルミエール』を殺したいのは同じだが。
お前があいつらと一緒にいたことは知ってる。素直に吐きな」
俺は悩んだ。エリックたちには恩もある。ただ、あいつが親父の仇であるのには変わりない。
ここであいつらを売っても、問題はないんじゃないか。俺にとって大事なのは、メディアとこの街を抜け出して逃げ切ることだ。
「あ、あいつらは……」
「駄目」
メディアが、鋭い目で俺を見ると、小さく首を振った。
「あなたは、そういう人じゃない。それに、教えてもきっと……彼は私たちを殺す」
「え」
もう一度、デイヴィッドと名乗る男を見る。……目の底に、深い闇が見えた気がした。
……確かに、こいつの言うことを信じられる保証はない。
……俺は悩んだ。行くも地獄、退くも地獄。そして、俺には……力がない。
「どうしろと言うんだ」
「私に任せて、あなたは逃げて。『あなたは助かる』」
分かったと言いかけて、俺は強烈な違和感を覚えた。「あなたは助かる」?つまり、自分を犠牲にすると?
ダメだ、それだけはダメだ。彼女には、生きてもらわないと意味がない。2人で生き残らないとダメだ。
でも、どうすればいい?目の前の男は、間違いなく強い。エリックならともかく、俺でどうにかなる相手じゃ……
俺の頭の中に、恐ろしい考えが浮かんだ。
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