魔王と魔法使いと失われた記憶
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67: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/12(水) 00:56:50.76 ID:yGgQ9HDMO


「な??」


「きゃあッッ!!?」


暴風のような、何かが吹いた。一瞬のうちに、男の姿が小さくなる。


気が付くと、私は……魔王に抱きかかえられていた。ハァッ、ハァッと荒い息が聞こえる。

「愚か者め……!!逃げないからこうなるっ!!」

「ご、ごめんな、さい……」

「クソが……俺一人なら、『3倍速』で戦えたがっ……」

遠くの金髪の男が、ブンブンと大剣を振り回している。

「おいおい、何だ今の??俺でも見えなかったぜ?」

魔王は私を置くと、荒い呼吸のままゆっくりと男に向かい歩き始める。マナの量が、酷く減っているのが分かった。
私を助けるために使った、あの「加速5」というのは……多分、彼の切り札だったんだ。

「お前が、知る必要は、ない。そして……もう一回ぐらいは撃てる」

魔王がまた短剣を構えた。男の表情が、再び引き締まる。

「……何?」

「お前も、分かってるだろう?『2倍速』ですら、お前は……致命傷を避けるのに手一杯だった。
そして、多分……お前も切り札を使った。あれがスレイヤーとかいう……『遺物』の力か」

「……だとしたら?」

「お前は、『5倍速』には、対応できない。ここで俺に斬られて……終わりだ」

街灯に照らされた男から、感情が消えた。重い沈黙が数秒続いた後、男は何かを呟く。


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