584: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/25(水) 23:27:37.42 ID:dbHTZ14LO
彼が、私を見て嗤った。
「やはりなぁ……雁首並べて、一網打尽だぁ」
銃がシェイド君に向けて構えられる。……まずいっっ!!!
「加速(アクセラレーション)5!!!」
オーバーバックに向けて駆け出す黒い影が見えた。こういう時のために潜んでいた、エリックだ。
「おぉ」
オーバーバックはすかさず標的を変える。白い閃光が、エリックの至近距離で放たれた!
ヴォン
「嘘っ!!?」
思わず叫んだ。銃から放たれた閃光は、向こうの家の壁を粉々に砕いた。……何という威力。
いや、驚くべきはそこじゃない。あの至近距離で、弾丸を避けたエリックがおかしい。「加速」をかけているからといって、あんなことが常人で可能なの?
「はっ!!いいねぇっ!!」
エリックの拳を、オーバーバックは銃身で受ける。エリックは思わず後方に退いた。
「くっ……」
「いやぁ、愉しいねぇ……もう少し熟れてからの方が食べ頃だがぁ……」
「……止まりなさい」
私は、震える手でアリス教授から貰った「魔導銃」をオーバーバックに向けた。彼が呆れたように笑う。
「おいおい姉ちゃん、そんなへっぴり腰じゃ俺は撃てねぇぜぇ……」
「やってみないと、分からないわ」
シェイド君たちが路地に辿り着く。「ここは任せたよ」と、デボラさんが息が上がっているシェイド君を引っ張った。
「……随分、悠長なんだな」
睨み付けるエリックに、オーバーバックが銃口を向ける。私への警戒が解かれてないのは、すぐに分かった。
「そりゃなぁ。そこから逃げるのは、転移魔法でも使わないと無理だぁ……お前らを片付けてからでも、十分間に合うぅ……」
悔しいけど、オーバーバックの言う通りだった。「転移の玉」は稀少品で、アリス教授をもってしても簡単には作れないとのことだった。
「あなたたちにも持たせられればよかったのだけど」と、心底申し訳なさそうにしていたのが目に浮かぶ。
ただ、もし使っていたらオーバーバックはすぐに私たちを殺し、デボラさんたちを追っただろう。
彼は、私たちがどこにいるのかを把握できる。それが本当なら、逃げを打つ意味はない。
私は呼吸を整えた。……大丈夫、分かってたことだ。
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20