魔王と魔法使いと失われた記憶
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45: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:42:04.10 ID:fbURo3hcO
「か……は……」

息が、苦しい。小さい身体なのに、なんて力だろう……意識が、遠退き始める。

魔王は我に返ったのか、急に力を緩めた。

「げほげほっ!!げふっ……」

「……すまない。……だが、俺はサンタヴィラの惨劇を疑っている」

「ど、どうして……」

「……俺の知る魔王は、そんなことをする人間じゃないからだ」

「え」

少しだけ、沈黙が流れる。

「……まさか、あなたって」

「そうだ。……魔王ケイン・ベナビデスの息子だ」

「でも、あれは20年前で……」

この子はどう見てもせいぜい15ぐらいだ。基礎学校の生徒だと言われても通るだろう。20年前に生まれているはずがない。

魔王が苦笑した。

「魔族の寿命は他の種族とそう変わらん。だが、俺のベナビデス家だけは別だ。エルフの連中並みには生きる。
だから、俺の成長は普通の半分だ。もちろん、お前よりは長く生きている」

「……じゃあ、28歳って」

チッ、と魔王が舌打ちする。

「あの店主、余計なことを……」

本当に年上だったのか。それなら、この態度の大きさは少し納得が行く。

「じゃあ、あなたは……父親の無念を晴らそうと」

「そんなんじゃない。ただ、納得が行かないだけだ。
父上があの国を滅ぼした、それは多分事実だろう。だが、俺の知る父上と『魔王ケイン』は全く噛み合わない。
真実を知りたい。ただ、それだけだ」

魔王が真っ直ぐ私を見た。漆黒の瞳はどこまでも深い。


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