魔王と魔法使いと失われた記憶
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326: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/01(木) 20:37:03.91 ID:mKWppRREO

目覚めると時計は6時を指していた。少し早く起きてしまったかしら。
魔王……エリックはすうすうと静かな寝息を立てている。こうして見ると、本当にただの年下の男の子にしか見えないんだけど。


「……かわいい、かも」


言ってから思わず口をふさいだ。何言ってるんだろう、私。そもそも急に彼を抱き締めたり、ちょっと行動がおかしくなってる。

「ん……」

エリックが身動ぎした。しまった、聞かれたかな……。

「あ、お、おはよう」

「ん……変な奴だな」

彼が目を擦る。良かった、気付いてない。

「ま、まだ寝てていいと思う。6時過ぎたばかりだし」

「……もうそんな時間か」

大きく伸びをすると、エリックはおもむろに着替え始めた。無駄な肉のない褐色の肌が、朝日に照らされて光る。

「え、ちょ、ちょっと?」

「……今更恥ずかしがることもないだろう。心配するな、お前が着替える時はいつも通り外に出てやる」

「そ、そうだけど……」

やっぱりどう接したらいいか困ってしまう。別に恋人になったとか、そういうわけでもないのに。


……恋人、か。


私はちゃんとした恋をしたことがない。子供の頃に出会った「あの人」に感じていたのは、恋愛感情というよりは大人への憧れだろう。
トンプソン先生……クリス・トンプソン宰相に対して持っていたのは畏れと尊敬が入り交じった感情で、これも多分恋じゃない。
異性と接することがほとんどなかったこともあって、私は22の今まで生娘のままだ。

だから、今私が抱えている気持ちが何なのかは、自分でもよく分からない。
これが恋というものなのだろうか?それとも、ただの同情?……頭が混乱する。

そもそも、エリックは私をどう思っているのだろう。昨晩、やっと私を「小娘」ではなく、名前で呼んでくれるようになったけど。
もし彼が私を「女」と見ているのなら、私はどうすればいいのだろうか。受け入れるべきなのかどうか、それすらも分からない。

……考えるのは、今はやめよう。考え出すと、頭がまとまらなくなる。



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