302: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/24(木) 21:24:51.05 ID:HSZ2OTe3O
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「なるほどな。やはりエストラーダ邸を消したのは、このグロンドの力ということか」
「特徴とも合致するから、間違いないな。とはいえ、いかに『特級遺物』とはいえ、その力を引き出すのは本人の資質がないと意味がない。
アヴァロン大司教自体も、相応の使い手と見るべきだろう」
小娘がはっと何かに気付いた。
「……って、これって……エストラーダ侯とかは、今別の所にいるってことですよね??だとしたら、助けられるんじゃ!?」
「どうやって探す?イーリスからズマまでは300キメドは優に離れている。それぐらいの距離を転移できることからして、探す範囲は膨大になるぞ?
転移先が魔獣の棲み処なら、辿り着くことすらままならん。この目録のハーグリーブスのように、食われて死ぬのが落ちだ」
ジャックの言う通りだろう。デボラの表情も険しい。
「ってこれ……帰還できるのは一人だけかい?」
「俺も詳しくは分からないが、この目録を読む限りではそうだな」
「となると、モリブスのネリドもついでに消されたことになるね。あんな奴どうなったって構わないけど、これはこれで大変なことになるんじゃないか?」
その通りだ。改革派のミリア・マルチネスが殺されただけでなく、旧守派で無頼衆との繋がりも深かったルイ・ネリドも消えたとなれば、モリブスのユングヴィ教団は大混乱に陥るだろう。
状況はどうも俺たちだけの話では済みそうもない。とっととこの国を去りたいが、小娘の修行をジャックにつけてもらわないと始まらない。
それは多分数日では終わらないだろう。厄介なことになった。
「だろうな。ジョイス……モリブス統領、ジョイス・ベーレンがじきここに来ることになるだろう。プルミエールは一度会っておいた方がいいな」
「ベーレン候か」
会ったことは1度ある。人間としては、まあまあ信用の置ける印象ではあった。
ワイルダ組の後援者でもある。表立っての支援は望めないが、何かしらの後添えがあるかもしれない。
「これは紛うことなき政変だ。7貴族の序列2位と、ユングヴィ教団の首魁が消えたわけだからな。
クドラクの件は、むしろこの前振りでしかなかったとすら言える。で、お前の修行だが」
小娘が封書を差し出した。
「その前に、これを。アリス教授からの手紙です」
それを受け取ると、ジャックはピッと切断魔法を使い封を切る。
中身を読み出すと、愉快そうにクックックと笑い出した。
「……面白い。あの女、この状況を読んでいたな」
「え?」
「何?」
アリス・ローエングリン。小娘の師に当たることは聞いている。精霊魔法の第一人者であり、40そこそこにしてオルランドゥ魔術学院教授という異例の出世を遂げている、らしい。
ジャックは手紙をテーブルに広げた。
「大分前に、奴はオルランドゥを出ている。今あそこにいるのは、途轍もなく精巧に作られた傀儡だ」
「「は?」」
プルミエールが手紙を手に取る。俺も横からそれを覗き見た。
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