251: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/15(火) 19:36:29.42 ID:mfBVGPEoO
目の前で、クドラクの右腕が飛んだ。鮮血が迸り、彼女はその場に膝から崩れ落ちる。
その向こうで、魔王が短剣を振りかぶったのが見えた。止めを刺そうとしているんだ。
「やめて!!!」
私の言葉に、月明かりに照らされた魔王の顔が訝しげに歪む。
「何故だ」
「これ以上傷付ける必要なんてないっ!!もう、『ファリス』さんは……」
彼女が戦えないのは、見て明らかだった。ハァ、ハァと浅い息をつきながら、左手で切り落とされた右腕の傷を押さえている。
そして、彼女が座る地面には……血の池ができていた。
もう、助からない。私にも、それが分かった。
魔王が短剣の血を拭い、鞘に納める。
「苦痛を長引かせるだけだ」
「……そうかもしれない……でも……少しだけ、話させて」
「何を話す」
「……何でこんなことをしたのか、せめてそれだけでも……」
クドラクが……いやファリスさんが顔を上げた。口元には微笑みがある。
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