222: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/11(金) 20:49:20.69 ID:n3eshWjqO
「はあっ、はあっ、はあっ」
全力で脚を動かす。視界は涙と汗で滲んでいた。
地面を蹴る足音は聞こえない。しかし、後ろから何かが猛烈に迫ってくる予感だけは感じた。
心に過るのは、恐怖と……その倍の後悔。……なぜ私は、あの時ファリスさんに対してもっと強く出なかったのだろう?
私は彼女の前で、クドラクのことを一言も言わなかった。
警戒されたくなかったから?違う、私は彼女がクドラクだと思いたくなかった。だから、あんな迂遠な言い方で彼女を探ってしまった。
止める機会は幾らでもあった。アミュレットを手に取って彼女が咳き込んだ時、見捨てていれば?戻って彼女がアミュレットを着けているのに気付いた時、無理矢理彼女のベッドに向かっていれば?
そうしなかったのはなぜか。……答えは出ていた。
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