185: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/03(木) 19:29:43.47 ID:2/zsC842O
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「……どうした、さっきから黙ってるが」
私たちは旧市街に向けて歩く。しかし、着いてほしくないという想いが足取りを鈍らせていた。
「分からないんです」
「クドラクの犯行が、ファリスの意思かどうか、か?」
「はい。……彼女と話していて、しっかりとした、強い心を持った子だと思いました。彼女が人殺しなんてするはずがないって。
でも……去り際、彼女はアミュレットを着けていた。私がランパードさんを呼びに下に行く前は、化粧台にあったのに」
「見間違いじゃねえだろうな」
私は首を振る。そうだったら、どんなに良かっただろう。しかし、間違いない。
そもそも、咳をしたタイミングがおかしかった。あの咳がわざととは思えないし、思いたくないけど……
私がアミュレットに触れるのを避けるためと考えたら、説明がついてしまう。
ランパードさんの目が鋭くなった。
「厄介だな。……もしファリスが自分の意思でクドラクになっているとしたら、それなりに頭は回る。あるいは……」
「私たちは警戒されてる?」
「かもな。エストラーダは信用しきっているが」
私は、騙されていたのだろうか?彼女の言葉に嘘があるとは思えない。でも……行動は確かに不可解だ。
空は茜色から藍色へと変わろうとしている。もう、迷っている時間は、ない。
ランパードさんが、急に空を見て叫んだ。
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