魔王と魔法使いと失われた記憶
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102: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/16(日) 16:40:33.82 ID:cAlXBzjlO
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「降りろ」

今日、初めて私に魔王が投げかけた言葉は、冷たい命令だった。

そこはモリブスの外れにある一軒家だった。木造で、かなり年季が入った建物のようだ。

「ここに、あなたの後援者が?」

「無駄口を叩くな、俺についてこい」

玄関のドアを魔王が乱暴に叩く。……返事がない。
もう一度ドンドンと魔王がやると、「うっせえなあ」という声が聞こえてきた。

「足悪いんだから上がってこいよ。エリック、お前だろ?鍵は開けてある」

「チッ」

ギイィ……と錆びた音と共にドアが開く。家の中は何かよく分からない紙と本で散乱していた。

「言ったのに片付けもできんようだな……」

ブツブツ言いながら、魔王が2階へと上がる。ギシギシと、階段がきしんだ。
そして、2階の奥の部屋のドアを無言で開けると、そこには……


「よう、エリック」


車椅子に乗った、痩せた魔族の男がいた。


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