620: ◆CpUz7d.S3o[saga]
2020/08/21(金) 17:24:40.98 ID:Ix+EQmkdo
審判「試合開始――」
審判「うわぁっ!」
合図とともに恐ろしいほどの加速を見せる黒い影。
戦術魔導士は一歩も動かず……
人間二人分の直径を持つ火の玉が、彼女の頭上から出現すると同時に撃ちだされた。
葬送者はまるで慣性を無視したかのように直角に移動し、火の玉の進路から外れる。
しかしそれで回避したことにはならなかった。
火の玉は破裂し爆発を起こす。
その衝撃波だけで葬送者は宙を舞う。
ここまで一瞬。一連の動きが見えていたのはそう多くない。
弟子(あの異常な動き、やっぱりあいつが……っ!!)
着地を待たずして、次の火の玉が発射される。
空中にいて回避のしようがない葬送者は、戦術魔導士の周囲にいくつもの火の玉が浮いているのを見た。
まさに絶望的状況……。
戦術魔導士(終わりだね)
ついに火の玉が葬送者を飲み込んだ。
開拓者「やったか!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜
戦術魔導士「私も参加させなさい!」
彼女がまだもう少し若いころ……王国戦闘大会に出場できるのは男性だけだった。
そんな中、60代の女性が男の世界である戦場に挑むと宣言したものだから、世間は嘲笑し、観客席からは過激な暴言で煽り立てた。
しかしその魔法の威力に出場者たちと観客は唖然とさせられた。
今までに出場した魔法使いとはレベルが違いすぎたのだ。
ただし、その快進撃は決勝戦で近衛兵の隊長に止められる。
世の男性たちはすっかり安堵した。別に隊長以外の男が負けた事実は変わらないのだが。
準優勝という好成績を収めたが、世間の反応は『やっぱり女は男に勝てないんだな』というものばかり。彼女は悔しさに震えた。
以来、ずっと隊長を倒すことだけを考え、他の選手のことは歯牙にもかけていなかった。
そう。油断していたのだ……。
〜〜〜〜〜〜〜〜
弟子「いや、まだ気を感じる!」
煙の中から葬送者が飛び出し――
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