48: ◆LXjZXGUZxjdx[sage saga]
2020/07/05(日) 04:33:18.23 ID:4Jd3JNMn0
ねむ「はー・・・。ここから見えている大きい建物全部が団地なのかな・・・?」
十七夜「そうだ。いちょう団地は東京ドーム6個分の面積に、総戸数2000を超える、県内最大級の団地だ」
灯花「この建物全部に、人がたくさん住んでるってこと? 世の中にはこういう住宅もあるんだねー。ここだけ人口密度がすごそう」
通行人「〜〜〜〜」
通行人「〜〜〜〜」
うい「・・・・? 今の人たち外国人?」
十七夜「気が付いたか。このいちょう団地の住人は外国人が多い。ちょっとそこの看板を見てみろ」
うい「わっ、六か国語で文章が書かれてるよっ!」
灯花「日本語、英語、フランス語、中国語・・・あとはなんだろう・・・? わかんにゃい」
ねむ「干されている洗濯物を見ると、日本ではあまりみない柄の物が多いね」
いろは「向こうの小学校の壁には、いろんな国の絵が描かれているよ」
十七夜「近くに本格的なベトナム料理を提供している飲食店や、東南アジアの商品を置いてある商店もあるぞ」
いろは「へえ、そうなんですか。でも、どうしてこんなに外国人が多いんですか?」
十七夜「いちょう団地が入居開始した当初は、日本人が住む普通の団地だった。だが、1976年に南ベトナム共和国が崩壊し、そこに住んでいたベトナム、ラオス、カンボジア人たちが政治的理由から難民として日本に来て、紆余曲折あってここに移り住み、その頃から外国人居住者が増えてきた。今では東南アジアや南米出身の者もいる」
ねむ「そんな短い間に様々な国から人が一気に集まってしまったら、文化や習慣の違いとかで何かと軋轢が生まれそうだけど・・・?」
十七夜「ああ、最初の頃は大変だったらしい。騒音問題、異臭問題や、それに学校だ。学校では、否応にも様々の国の子供たちが顔を合わせる。子供たちや教員が戸惑うのはもちろん、保護者の中には外国人に悪い印象を持っている者もいた」
十七夜「だが、その反面、根気よく多文化共生を唱えて奔走した者や、外国人居住者に対して生活のルールを親切に教授し続けた者、積極的に居住者同士の交流ができる場を設けた者がいた。そういった者たちの努力の結果、子供たちが日本語を覚える頃には、多文化による対立はほとんどなくなっていた」
うい「わあっ、素敵だねっ!」
十七夜「ああ、それはとてもいいことだ。ただ、今も全くトラブルが無いと言う事はないがな。たまに外からちょっかいを出しに来る輩なんかもいる」
十七夜「だが、見ての通り、基本的には今は静かで平和な団地だ。これからもここはより平穏な住居地に向かって歩み続けるだろう」
ねむ「今は多文化共生ができている状態なんだね。そこまで至れた経緯をもっと詳しく掘り下げれば、これからのグローバル社会を円満に築くための大きなヒントが得られそうだ」
灯花「そーそー。これからの日本はこういう場所がどんどん増えていくだろーしねー」
十七夜「君たちは、グローバル社会だからと言って外国人を大勢受け入れることが最適な社会の在り方のように話しているが、本当にそうか?」
灯花「そーでしょー? 今の日本は人口が減っているんだから」
十七夜「人口が減っているからといって、外国から人を大勢入れたら、今の社会システムに負担がかかって、最悪は日本人も外国人も共倒れになったりはしないか? 現にここだって最初の頃は大変だったのだから」
灯花「い、いやでも、今はどこも人手不足なんだから、人を増やさないとそれこそ社会が回らないでしょ? ただでさえ今は景気が悪いし」
十七夜「日本は過去に、明治維新や昭和の高経済成長で短期的に大きく発展を遂げた。その頃は今より人口は少なかったにも関わらずにだ。昔出来たことなら、今でもみんなで知恵を出せば外国人に頼らなくても済む方法があるんじゃいないのか? 何故その議論を飛ばして、いきなり外国人に頼ることが先になるんだ?」
灯花「そ、それは・・・時代が違うし・・・」
十七夜「このいちょう団地はうまく多文化共生ができているが、それは先ほども言った通り、多文化共生を目指して弛まない努力をした者がいたからだ。そういう努力ができる者が全国的にいる保証はあるのか?」
十七夜「それに、今もここには全くトラブルが無いと言う事はない。それは、どうしても多文化共生を受け入れられない者が世の中に少なからずいるからではないか?」
十七夜「言葉・習慣・文化・生活様式・宗教観の違いに恐怖を感じる者だっている。そういった者に、グローバル化の時代だからと言って、多文化共生を押し付ける事を当たり前にしてしまっていいのか? それは公平で平等な社会と言えるか?」
灯花「う、う〜ん・・・」
ねむ「・・・・・・」
うい「む、難しい・・・・」
十七夜「・・・・この件について今すぐ答えを出す必要はない。今日の目的はそれではないからな。次の場所に行こう」
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