七海やちよ「神浜を観光するわよ」
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28: ◆LXjZXGUZxjdx[sage saga]
2020/07/05(日) 03:45:16.73 ID:4Jd3JNMn0

灯花「とーちゃーく!」
   
うい「大きな工場がたくさんある!」

ひなの「南の海沿いは神浜の経済を支える重要な工業地帯だからな」

ねむ「・・・ついさっきまでここを訪れた文豪達に思いを巡らせていたのに、急に現実に引き戻された感覚だよ。古き良き時代を象徴する日本庭園と、大量生産大量消費を象徴する現代的工場が隣り合うこの光景はなんとも奇妙だね」

ひなの「まあ、奇妙と言えば奇妙かもしれないが・・・。ただ、ここは神浜の歴史を偲ぶことができるとてもいい場所なんだ」

ねむ「というと?」

ひなの「1923年、関東大震災があったことは知ってるか?」

ねむ「うん。知識としては」

ひなの「その大震災でこの辺りの街は一瞬にして瓦礫の山になってしまった。住処を失った人々は、この三渓園に逃れて生き延びたんだ。そして当時の経済界の中心人物だった原三渓が復興に多大な尽力をして、短期間で市の経済を立て直した」

ひなの「それからもう一つ。ここら一帯は江戸時代の頃から首都を防衛するための重要拠点なんだ。地図を見ればわかるが土地が東京湾に突き出している岬になっているからな」

ひなの「先の戦争でも、この近くに高射砲陣地や特攻兵器の基地が日本軍によって建てられた。だから米軍の空襲の標的にされてしまった」

ひなの「この三渓園は爆弾の直撃だけはなかったものの、園内は荒れ果ててしまった。原家は三渓園の復旧のため、園を市に売却するという苦渋の決断をし、それで復旧工事がなされて三渓園は息を吹き返したんだ」

ひなの「震災に戦争・・・。そういった苦難を乗り越え、三渓園は古き良き美を現代に残し、そして今は見ての通り、この周囲はたくさんの工場が建って平和に発展を遂げている。だから、そんな市の歴史を、ここから偲ぶことができるんだ」

ねむ「苦心惨憺の末、新しい時代が開拓されていったんだね。それを知るとこの光景もまた違った印象になるよ。歴史を知ると見え方が変わるという経験は面白いね」


ひなの「今の神浜は、イブやワルプルギスの夜で大きな被害を受けてしまった。だが、そんな苦難を乗り越えた神浜の歴史を、今と同じようにアタシらが偲ぶことができる日がいつか必ず来るだろう。今度はアタシらで新しい時代を開拓していくんだからなっ」

ねむ「・・・! それは町を破壊して罪悪感に圧し潰されそうな僕達に対する激励だね? まさかこんな流れで僕達を励ましてくれるなんて、これは完全に一本取られたよ」

灯花「くふふっ、ひなのお姉さまだーいすきっ!」

桜子「 |ひなのは優しくて頼れるお姉さん。データベースに追加した| 」

ひなの「おうっ! しっかり追加しておけっ!」

いろは「ふふっ」

うい「あははっ」


ひなの「さ、次へ行こう。シーサイドラインに乗って更に南に行くぞ」









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