57: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:52:59.35 ID:BHjCA0Mo0
そこまで姉さんは話して、すーっと息を吸う。気持ちを込めるように、ゆっくりと。そしてその気持ちを言葉にして形にする。
「たしかに辛いことはたくさんあったけど、でも、私は一度も自分が不幸だなんて思ったことなんてない。ずっと幸せだよ。だって、私にはお母さんと陸がいる。」
あの番組の中、姉さんはずっとそう言っていた。しかし、番組はそれを強がりだと認識し、一層「不幸な北沢志保」の健気さを演出した。
俺も同じことを思っていた。姉さんは理不尽な重荷を背負わされ、それを健気に一人で背負いきった強い人だと思っていた。
「確かにアイドルを始めたきっかけはお金のためだった。そのせいで、いろんな衝突もあった。だけどね、それは始めだけ。」
「だんだんアイドルをやっていくうちに、私は変わっていった。たくさんの仲間と競争したり団結したり、そうしていくうちに、私はアイドルに夢を見るようになった。」
「だからね、私は確かに普通の女の子の幸せを持ってないのかもしれないけど、私にしかない幸せをたくさん持ってると思う。」
「私は誇らしいの。陸が私を『自分を守ってくれる強い人』って言ってくれたことが。そうなれるよう、頑張ってきたから。」
「でもね、そうなれたのは私が頑張ったからだけじゃない。陸やお母さんがいてくれたから、私は自分で誇れる私になったんだと思う。私がそうしたように、陸も私も守ってくれてたの。」
「だから、自分には何にもないなんて悲しいこと言わないで。陸、ありがとう、私の弟になってくれて。」
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