80: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/05/18(月) 21:43:14.80 ID:RS4SDFXO0
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清路警察署・刑事一課和久井班室
亜季「これで、良いでありますな」
楓「……」
亜季「おや、確か高垣楓殿でありますな。何かご用でありますか?」
楓「すみません、お邪魔するつもりはなかったのですか」
亜季「良いでありますよ。書類仕事を片付けて、これの準備をしていただけであります」
楓「その封筒は……?」
亜季「辞表であります。私も責任を取るべき立場でありますから」
楓「……あなたのせいでは、ないと思います」
亜季「そうではありますが、刑事になった時に準備していたであります」
楓「異動ではいけませんか」
亜季「そうでありますな、課長が許すのであれば。交番勤務からやり直すのも、悪くないであります」
楓「……」
亜季「警部補殿について、でありますか?」
楓「……はい。何か見逃していることはないか、と思いまして」
亜季「ご存知であるかと思いますが、警部補殿はオープンでクリーンでありました」
楓「知っています」
亜季「情報のほとんどは共有しております。事件資料も、今は持ち去られておりますが、和久井班のメンバーは誰でも見れたであります」
楓「それなのに、留美さんは見つかっていません」
亜季「捜査中の事件については、私でもリストアップしたであります。こちらを」
楓「ありがとうございます。このチェックは」
亜季「身元が確認された人物であります」
楓「つまり、大和さんのリストでは対象となる人物はいない、と」
亜季「その通りであります。犯罪者狩りのようなことは続けていないありますから、ますます目的が分からないでありますよ」
楓「隠れている方法については、心当たりは」
亜季「捜査側として様々なことを惜しみなく教わったであります。ですが、勝負を分けるのは経験であります」
楓「経験?」
亜季「擦り減らした靴底が、頭と体を刑事にするのでありますよ。教えても、教えきれないものでありますから」
楓「留美さんの経験は、こんなことに使われるべきではないと思います」
亜季「同意するであります」
楓「ありがとうございます。ちょっと、発想を変えてみます」
亜季「何もご協力できずに問題ないであります。そう言えば、高垣殿?」
楓「何でしょう?」
亜季「刑事だったとお聞きしたであります」
楓「短い期間です。向いていない……向き合いきれなかったので、今は希砂本島で駐在さんをしています」
亜季「この部屋はこんな有様であります。私もいられません、戻ってきてはいかがでありますか?警部補殿から誘いを受けた、とも聞いているであります」
楓「そのつもりは……ありません。お邪魔しました」
亜季「……」
亜季「この事件は終わっても世の中は続くであります。私がいなくても、平和であって欲しいのであります」
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