55: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:40:21.29 ID:5z9OpdEU0
「あなたと美春さんは、どのような関係だったんですか?」
「え…?」
酒を注いでいた森浦の手が、慌てて瓶をひっこめた。
56: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:41:18.80 ID:5z9OpdEU0
「あなたは、美春さんと『男と女の関係』だったのではありませんか?」
「!!!」
びくり、と森浦の体がこわばる。
57: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:41:46.70 ID:5z9OpdEU0
沈黙。
58: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:42:29.41 ID:5z9OpdEU0
「森浦さん」
紅が沈黙を破った。森浦は俯いている。
「私は、一度受けた仕事には全身全霊でかかります。あなたのために命を懸けます」
59: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:42:59.91 ID:5z9OpdEU0
やがて森浦は小さく頷き――静かに語り始めた。
60: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:43:52.30 ID:5z9OpdEU0
――森浦と美春は一緒に働くうちに惹かれ合い、関係を持った。
店が忙しくデートなどはあまりできなかったが、森浦がプロポーズを決心するまでにそう時間は必要としなかったという。
「和香と美春はとても仲が良かったんですよ…3人で上手く店を切り盛りして…これなら、本当の家族になれるかと…」
61: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:44:30.03 ID:5z9OpdEU0
――しかし、父から再婚話を打ち明けられた和香は、思いがけず猛反対した。
「そんなことをするなら私は出ていく。父親とも思わない」
「私は美春さんをお母さんなんて思えない」
62: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:44:57.52 ID:5z9OpdEU0
「娘があんなに怒るのを見たのは初めてでした…私も呆気にとられてしまって…」
「いえ、私が無神経だったんです…こどもにとって母親がどういうものなのか…娘が、小さい頃に亡くしてしまった母親をどう思っていたのか…考えもせずに…」
63: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:45:24.61 ID:5z9OpdEU0
――娘が反対している以上、再婚は諦めるしかない。
だが、かといって何事もなかったようにまた3人で暮らすこともできない。
再婚話の頓挫は3人の間に決定的な亀裂を生んでしまったのだ。
64: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:46:01.13 ID:5z9OpdEU0
「美春には、店を辞めてもらうように言いました…。友人のつてで、次の就職先を紹介して…」
「美春には反抗されました…わんわんと泣きじゃくって…」
「でももう私は耐えられなかったんです…それで…退職金を…いえ、手切れ金を渡したんです…もうこれで出て行ってくれと…」
65: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:47:00.90 ID:5z9OpdEU0
(それは…美春さんからすれば、プライドを傷つけられただけだっただろうな…)
紅はじっと、考えこんでいた。
仲が良かったはずの和香に裏切られた。
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