43: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:30:41.64 ID:5z9OpdEU0
――しかし5年前、外出先から森浦が戻ると、店は荒らされ、金目のものは全て奪い去られていた。
それだけではない、留守番をしていたはずの和香と従業員の女性…こちらは『美春』といった…も行方不明になってしまったのだ。
44: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:31:13.23 ID:5z9OpdEU0
――店内は派手に荒らされてはいたが血痕などの痕跡はなく、二人は犯人に連れ去られたものと考えられた。
しかし警察の捜査は遅々として進まず、森浦は自ら人を雇って行方を捜し始めた。
探偵、興信所、時には怪しい稼業の人間まで…。しかし手がかりは掴めなかった。
45: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:31:53.74 ID:5z9OpdEU0
――やがて財産が底をついた森浦はこのスラム街に移り住み、不法投棄された資材でこしらえた屋台でなんとか日々生きていける程度の稼ぎを得て暮らしていたのだ。
46: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:32:40.76 ID:5z9OpdEU0
「正直、私も諦めていました…無我夢中で探しまわってもなにも見つからず……雇った人間も、正直、その……金をふんだくって行方をくらますようなのが何人も……さすがに、疲れはててしまいまして…」
「もう酒だけが生きがいのような毎日で…もっとも、自分で飲むぶんなんて大して買えないので…飲んだくれのくせにまあまあ健康という……ええ、今日は特別です、ははは…」
47: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:33:09.91 ID:5z9OpdEU0
――しかし、先日。森浦はセンザキの繁華街で男と連れ添って歩く美春らしき女性を見かけた。
「美春!」
森浦が名前を呼ぶと女は血相を変えて駆け出し、森浦もその後を追いかけようとした。
48: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:33:47.05 ID:5z9OpdEU0
――が、すぐに女と連れ添っていた男に襟首を掴まれてしまった。
「おいっ!なんだテメェは!」
「放してくれっ…あのっ…美春っ…」
49: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:34:24.32 ID:5z9OpdEU0
――顔面を殴られて気絶した森浦が目を覚ました時には、男も美春らしき女も跡形もなく消えていたという。
50: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:36:30.05 ID:5z9OpdEU0
「私も気が動転して、はっきりと顔を見れたのか自信はないんですが…あれは美春でした。ええ。間違いありません」
ぐい、と酒を飲み干した森浦が続ける。
「だって、そうじゃなきゃおかしいじゃないですか…美春の名前を呼んだだけで慌てて逃げ出すなんて…」
51: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:37:11.81 ID:5z9OpdEU0
しかし、それを語る森浦の様子にまりは違和感を覚えていた。
(なんだろう、この…引っかかるような感じ…?)
52: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:37:57.22 ID:5z9OpdEU0
ちら、とまりは隣の紅の顔を見やった。
「……」
紅もなにか腑に落ちない顔で腕を組んでいる。
53: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:38:48.94 ID:5z9OpdEU0
(そうだ、森浦さん…美春さんの名前を出すときだけ…なんというか…)
挙動がおかしい。
眼がきょろきょろと泳ぐ。
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