もしもし、そこの加蓮さん。
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68:>>65から続き[saga]
2020/04/29(水) 16:40:31.23 ID:SPkljqcV0

 「っ! 加蓮っ!」

 「……ぅ……ぁ、ひぐ…………っ」

駆け寄り、肩を揺すろうとした彼の動きが止まります。


加蓮は泣いていました。
今まで堰き止めていた分を一息で吐き出すみたいに、
涙と汗でメイクを台無しにしていました。
白い肌を真っ赤に染め上げながら、年端もゆかぬ子供のように。

苛立ちでも悔しさでもなく、歓喜に涙を流す経験は、
彼女の十六年の生で初めての事でした。


傍で膝をついていた彼は、インカムマイクを外すと加蓮の隣へと座り込みます。
そして、何もしませんでした。

いつだってアイドルの傍に居られるのは、担当プロデューサーの特権でした。


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