もしもし、そこの加蓮さん。
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60:名無しNIPPER[sage]
2020/04/29(水) 14:34:10.82 ID:SPkljqcV0

 ◇ ◇ ◆


暗い。


ドア一枚を隔てると、
あれだけ明るかった通路の照明が嘘のように沈んだ空間が待ち構えていました。
僅かに使われている照明も、辛うじて足元や手元を照らすためのものだけです。

次いで、空調でも吹き飛ばせない熱気が肌を撫で、
暑くて堪らない筈なのに、加蓮は身体を震わせてしまいます。


 「楽しみましょう」

誰かが呟くと同時、かちり、と時計の音が聞こえました。
十回続き、二十回続き、三十回目が刻まれた瞬間、メロディが流れ始めます。


何百回と聴いた旋律を、また身体へと馴染ませるように。


ヘッドセットの位置を確かめて、長く長く息を吸いました。



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