1:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:51:48.44 ID:BNodmjS7O
胡蝶は器用だ。俺なんかよりもずっと。
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2:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:52:34.62 ID:BNodmjS7O
「全く、包帯くらい自分で巻けるようになってくださいね」
以前治療してもらった傷に薬を塗って、包帯を巻き直そうと思った。けれど、加減がわからない。戦いの最中に取れることのないようにきつく結んでいたら
「ちょっと、冨岡さん。きつく結びすぎです。苦しいでしょう?」
3:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:53:41.28 ID:BNodmjS7O
「別に気にならない。取れてしまうよりかはいい」
「…かしてください」
そこから冒頭のセリフを言われる。胡蝶に巻いてもらった包帯は、きつすぎもせず、かと言ってずれることもなく完璧に巻かれていた。
4:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:54:17.63 ID:BNodmjS7O
「…胡蝶は天才か?」
「ふふ…なんですかそれ?冨岡さんが不器用なだけですよ」
楽しそうに笑う胡蝶には、俺が本気でそう思っていることなんて伝わっていないようだ。
5:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:54:55.86 ID:BNodmjS7O
「慣れているだけですよ。今までどれくらい包帯を巻いてきたと思っているんですか…」
「胡蝶…」
そう言って、俺の包帯に触れながら、しかし胡蝶は別のところを見ていた。自分の屋敷を隊士の治療院として開放している彼女には、きっと今まで助けられなかった隊士たちの姿が見えているのだろう…そして、その中には、姉である胡蝶カナエも入っているのだろう。
6:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:55:26.87 ID:BNodmjS7O
「ほら、巻けましたよ、冨岡さん」
「…あぁ」
その小さな背中に…同年代の女性と比較しても小さすぎるくらいに小さい背中に、どれほどの想いを背負っているのだろう。そんなことを考えながら胡蝶の顔を見る。
7:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:55:56.62 ID:BNodmjS7O
「冨岡さん?」
その顔にはいつも通り、彼女の姉を彷彿とさせる笑顔が張り付いている。そう、胡蝶の笑顔ではない。胡蝶の笑顔はもっと…
8:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:56:39.62 ID:BNodmjS7O
「人の顔を黙って見つめて、どうしたんですか?失礼ですよ?」
「…すまない」
そう、今少し近づいた。勝気で、強気で、お転婆な、そんな笑顔だった。この笑顔は偽物だ。だが、この笑顔に救われた人間はきっと山ほどいるのだろう。
9:名無しNIPPER
2020/04/11(土) 19:57:25.51 ID:BNodmjS7O
「本当にどうしたんですか?今日の冨岡さん、何か変ですよ?」
まぁ、いつも変なんですけれど。と続ける胡蝶をよそに、俺は更に考える。胡蝶の笑顔に救われた人がいる。胡蝶の治療があるから安心して戦える人がいる。胡蝶の強さがあるから守られた人がいる…では、胡蝶は?誰に守られているのだろうか?
柱でさえも、怪我をすれば彼女の世話になる。では彼女が怪我をした時は…
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