王馬「大変だ!オレが行方不明になっちゃった!」
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20: ◆DGwFOSdNIfdy[sage saga]
2021/07/10(土) 22:26:40.46 ID:joCTZYjz0
ひとり善がりで衒学的で特に実の無い退屈な会話を切り上げて、僕たちは次の目的地へ向かった。
王馬「話の途中じゃなかったっけ。ほら、小説がどうのって」
最原「そうだね、どこまで話したんだったかな」
王馬「なんか手紙が来て…また昔住んでた家に行ってみたら精神科医が銃を持ってたって」
最原「ああ、なんだ。もうおしまいじゃないか」
王馬「え?そんなところで終わるの?」
最原「正確には、それを見た語り手が唐突に怒って精神科医と一言も交わさないままさっさと帰る。で、おしまい」
王馬「銃を突き付けられたから怒ったの?」
最原「違うよ。最後の場面は、男が精神科医を一方的に見付けただけで直接対面した訳じゃないからね」
王馬「だったら─」
最原「結局、どうして男が怒ったかは作中で示されてないんだ」
王馬「あーわからない事があるってそういう…」
最原「うん。よく憶えてるね」
王馬「バカにしないでよ。ていうか、それをオレに聞かせてどうしたかったのさ」
最原「特にどうするつもりも…。話の種にしようとしただけだから」
王馬「もっとマシな話題無かったの?別にいいけど」
最原「ごめん…」
王馬「いやいいよ、こっちこそなんかごめん。それはそうと、最原ちゃんはわからない事をわからないまま丸っと全部ほっといたりしないよね?」
最原「すっきりしない読了感で気持ちの据わりが悪かったから、取り敢えずパブサして他の人の感想や考察を見てみはしたんだよ。マイナーな作品だからか、はたまた僕の探し方が悪かったのかあんまりヒットしなかったけどね」
最原「精神科医は男を殺すつもりだったとか、男にジビエを振る舞おうとしていたとか…正直どれもしっくりこなくて余計にもやもやしただけだった」
王馬「最原ちゃんの解釈はどうなの?」
最原「うん、その話をしたいんだ。一応僕なりに考えを整理してみたから」
最原「手紙によると、精神科医とその奥さんは恋愛結婚で、言葉を選ばずに言うなら当初バカップルだった。でも奥さんが発症して人が変わったようになったせいで、精神科医は永久不変だと堅く信じていたお互いの愛情に自信を持てなくなった事が判るんだ」
王馬「病気さえ無ければバカップルのままだったかも知れないのに、ちょっと可哀想だね」
最原「きっとそれが普通の考えだよね。ただ、精神科医はそういう風には思っていなかった。奥さんの本格的な発症はせいぜい切っ掛けに過ぎなかったんだよ」
最原「人の心理がどれだけ複雑怪奇で不可解かなんて、精神科医なら嫌というほど知っているはずだけどさ。それでも蜜月時代は、奥さんだけは例外だと誤信していたんじゃないかな」
王馬「それが結末の解釈にどう関係するの?」
最原「『どう足掻いても他人の気持ちなんて理解出来ない』っていうのがこの話のテーマだと思うんだよね。だから読者には、精神科医の行動の意味も語り手が怒った理由もわかりっこない。そういう事なんじゃないかなって」
王馬「えー…」
最原「納得いかない?」
王馬「そりゃまあ、それだとなんでもアリになっちゃうし、投げっぱなしも同然じゃん」
最原「うーん、反論の余地は無いね。こんな話に長々付き合わせて悪かったよ」
王馬「いや─」
最原「あっ」
王馬「え、何?」
最原「あそこの部屋から女の子の声が聞こえてきたから、入間さんじゃないかって」
王馬「ああ…あんな所に行く人なんて限られてるしそうなんじゃない。入ってみようか」
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