【鬼滅の刃】もう嘘はつけない【ぎゆしの】
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8:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:42:38.06 ID:6ZY1ckmrO
「…遅いですね」

 当然探すべき忘れ物などない私は暇を持て余す。けれど、私が何もしていないことを差し引いても相当な時間がかかっている…何か嫌な予感がする。


9:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:43:27.16 ID:6ZY1ckmrO
「…見に行きますか」

 勝手知ったる学校なのをいいことに、鍵を閉め、職員室の方向へ向かう。しかし、冨岡先生は職員室に辿り着く前に見つかった。


10:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:44:12.33 ID:6ZY1ckmrO
「と、冨岡先生!ずっと…ずっと前から好きでした!つ、付き合ってください!」

 なんと、あろうことか中庭で告白をされているではないか。私は思わず見つからないように隠れてしまった。そっと相手の顔を見る。クラスは違うが、同じ学年の女の子だ。そういえば、彼女も冨岡先生が好きだと言っていた。放送で流れたお客様とは彼女のことだったのか。なんということだ、先を越されてしまった。


11:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:45:31.08 ID:6ZY1ckmrO
「…悪いが君の想いに応えることはできない」

 冨岡先生が断る。私はほっと胸を撫で下ろす。良かったまだチャンスはある。けれど、次の瞬間、彼女が信じられない言葉を放った。


12:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:46:32.97 ID:6ZY1ckmrO
「は、はは…う、嘘ですよ…冨岡先生、エイプリルフールです」
「…なんだ、そうだったのか」

 ひっかかりましたねと、続ける彼女の目は全然笑えていなかった。そっちの方がよっぽど嘘だ。振られたショックをごまかしているだけではないか。けれど、私の方はその一言で告白ができなくなってしまった。こんなタイミングで告白なんてしたら、私の告白まで嘘だと思われてしまう。


13:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:47:30.41 ID:6ZY1ckmrO
「すまないな、人を待たせているから、失礼する」

 冨岡先生がこっちにやってくる。いけない、早く立たないと。立って気持ちを切り替えなければ。



14:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:48:23.36 ID:6ZY1ckmrO
「なんだ、胡蝶。忘れ物は見つかったのか?」
「…ッ」

 悔しくてたまらない。ずっと前から好きだった?そんなの私だって同じだ。いや、私の方がずっとずっと、それこそ前世から冨岡さんのことが好きだった。


15:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:48:59.17 ID:6ZY1ckmrO
 鬼がいない世に生まれ、もう毒を飲むことも、無理な鍛錬をする必要もなくなった。お互いに姉の仇など討たなくても良い世の中になった。だから、きっと今度こそ想いを伝えられる。きっと今度こそ一緒に笑い合える。そう思っていたのに、あの子が自分を守るためだけについた嘘のせいで…悔しくてたまらない。


16:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:50:21.17 ID:6ZY1ckmrO
「はい、見つかりました。ありがとうございます」

 とにかく今日のところは出直そう。そして、また明日、頃合いを見て告白すれば良いのだ。大丈夫。前世から何年も何年も待ってきたのだから。高々一日ではないか。待つことなんて慣れっこだ。そう思っているはずなのに。


17:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:51:17.67 ID:6ZY1ckmrO
「胡蝶…」
「見ないでください!」

 何故か涙が止まらない。ダメだ、早く泣き止まないと、冨岡先生に迷惑がかかる。早く泣き止め、感情の制御ができないのは未熟者だ。


18:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:51:59.93 ID:6ZY1ckmrO
「胡蝶…」

 冨岡先生はなおも優しく声をかけてくる。本当に空気が読めない。こっちは優しくされればされるほど、涙が溢れて止まらないと言うのに。そんな乙女心など解さないのだろう。


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